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復興を遂げつつあるインドネシアの養鶏産業


【シンガポール駐在員 宮本 敏行 8月3日発】インドネシアをはじめとする東
南アジア各国は、97年後半から深刻な経済危機に見舞われた。それまでの目覚まし
い経済の伸長を背景とした畜産業も、一時的に後退することとなったが、最近では
その後遺症から次第に立ち直りつつあるようだ。

 養鶏は畜産業の中でも比較的資本投下の負担が軽く、農家が取り組みやすい業種
として、東南アジア地域では早くから発展を遂げてきた。しかし、インドネシアに
おける近代の養鶏業の発展には、70年代後半におけるブロイラーの導入が大きく貢
献している。同国の97年における家きんの飼養羽数は在来種(いわゆる地鶏)が2
億6千1百万羽、採卵鶏が7千1百万羽、あひるが3千万羽、ブロイラーが6億4
千1百万羽となっている。これらを、統計に初めてブロイラーが登場した81年と比
較すると、それぞれ1.96倍、2.87倍、1.62倍および25.2倍となり、ブロイラーの顕
著な伸びがうかがえるものとなっている。

 ところが、経済危機の影響を最も色濃く反映した98年の統計によると、全カテゴ
リーで軒並み前年を割り込み、特に、商業的な集約生産が行われる採卵鶏は3千9
百万羽、ブロイラーは3億5千4百万羽と、前年の半数近くまで激減することとな
った。

 しかし、最近の緩やかな経済状況の改善による増羽意欲の向上から、99年(速報
値)は飼養羽数が全カテゴリーで増加に転じ、在来種が2億6千6百万羽、採卵鶏
が4千2百万羽、あひるが2千6百万羽、ブロイラーが4億1千9百万羽にまで回
復している。98年との比較では、全体で12.1%の増加となったが、他の家きんが10
%以内の伸びにとどまったのに対し、ブロイラーは18%の増加を見せ、この局面で
もけん引役を演じた。

 同様に、家きん肉生産も98年には前年を割り込んだものの、99年には在来種が31
万8千トン、採卵鶏が2万7千トン、あひるが18万トン、ブロイラーが33万7千ト
ンにまで回復している。また、鶏卵生産量も98年は一時的に減少したが、99年は増
加に転じ、それまで順調な推移を見せていた97年の71%に相当する54万6千トンに
達している。

 鶏肉の小売価格も上昇傾向で推移しており、最低価格を記録した1kg当たり5,700
ルピア(約77円:100ルピア=約1.35円)に対し、今年7月上旬には6,800ルピア
(約92円)にまで回復している。最近の鶏肉需要の盛り上がりから、最終的には7,
500ルピア(約101円)程度まで上昇するものと予測されている。

 インドネシアの家きん肉生産量は90年代前半に牛肉を追い抜き、現在では最も国
民に親しまれている食肉としての位置を確立している。98年の食肉の1人当たり消
費量は4.24kgで、ピークとなった96年の8.41kgと比較すると、半分近くにも落ち込
んだ。99年は4.45kgと増加の気配がうかがえるが、従来の水準まで回復するには、
その大宗を占める鶏肉の生産動向がカギになるものと思われる。

 なお、インドネシア養鶏農家協会は、養鶏産業の回復度に見合った飼料の供給が
十分に行われていないとして、養鶏産業の本格的な復興には、飼料産業セクターの
立ち直りも不可欠であるとしている。


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