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小売店が豚肉を価格統制品に要望(マレーシア)



【シンガポール駐在員 外山 高士 8月17日】マレーシアのセランゴール州と
首都クアラルンプールの食肉小売店組合が、政府に対して生体豚と豚肉を価格統制
品に指定するよう要望していたことが分かり、話題を呼んでいる。

 同国では、製造者や流通業者などによる不当な搾取や価格のつり上げを防止し、
消費者の手ごろな価格での商品入手を可能にする目的で、価格・供給統制制度を実
施している。同制度では、統制品目として指定された製品について、製造数量や在
庫数量の報告義務があるほか、製品によっては生産や製造、販売に政府の許可を必
要とするもの、小売価格が政府によって指定されているものがあり、違反者に対す
る罰則規定も定められている。畜産物では、鶏肉について販売許可が必要とされ、
小売価格も指定された価格統制品となっているほか、練乳も価格統制品に指定され
ている。なお、鶏卵については、98年5月に供給不足から価格が高騰し、価格統制
品に指定される動きが見られたが、その後の生産量の安定に伴う価格の低下で、指
定が見送られた経緯がある。

 マレーシアにおいては、昨年流行したウイルス性脳炎によって減退していた豚肉
消費が徐々に回復しつつあるものの、疾病まん延防止のために実施した約100万頭
のとう汰から生産の回復が遅れ、卸売価格などが上昇している状況となっている。
こうした中にあって、食肉小売店組合では、今後供給不足からさらなる価格の高騰
が予想されるなどの理由から、政府に対して価格統制品指定の要望を出したものと
みられている。

 一方、生産者団体では、価格統制品に指定された場合、政府が農家販売価格と卸
売価格も監視することから、結果として小売店の利益が少なくなる可能性があるこ
とを示唆して、要望を取り下げるよう主張している。また、生産者団体によると、
政府との間で、生体豚の農家販売価格について、100s当たり600リンギ(約1万7,
400円、1リンギ=約29円)を超えない価格で販売することを約束しており、7月
の平均販売価格は100s当たり520リンギ(約1万5,080円)で安定的に推移したと
している。

 これに対して、価格・供給統制制度を所管する国内取引消費者行政省では、生体
豚と豚肉を価格統制品に指定した場合の影響などの分析が終わっていないことから、
現時点では、豚肉などを供給統制品に指定する予定も価格を統制する予定もないと
している。

 マレーシアでは、7月にボルネオ島のサワラク州で、ニパウイルスに感染した豚
が発見され3農場で5千頭以上の豚が処分されるなど、今後の需給動向が不透明な
状況となっており、今回の動きは見送られる公算が強いとみられている。


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