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アルゼンチン農牧展で農牧庁長官が農業対策演説



【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 8月24日発】アルゼンチンの畜産の伝
統行事、国際農牧工業展(農牧展)が今年も多数の一般参加の下、ブエノスアイレ
ス市で開催され8月上旬に幕を閉じた。農牧展は、今年で114回を数える。

 昨年の農牧展は、農業ストライキただ中で開催されたため、政治色が強かったが、
今年は表面上平穏ムードで事が運んだようだ。デ・ラ・ルア新政権の課税強化と国
家経費削減策に国民の不満が高まる中、農業セクターも昨年に比べ特段好転の兆し
もなく先行き不透明な中でのお祭りとなった。

 農牧展で恒例になっている公式演説で、ベロンガライ農牧庁長官は品質や安全性
を考慮した農畜産物の付加価値革命の必要性、先進諸国の農業補助批判、農畜産物
輸出の振興などに農業者の理解を求めるとともに、農業セクターの抱える問題に対
しては、今後の対策(一部は実施済み)として以下の内容を発表した。

・ 負債農家対策として懸案の国立銀行の借換融資は、年間金利7%で実施
・ YPF社販売の農業用ディーゼル油を1リットル当たり39.9セント(約43円:
 1ドル=約107円)で販売
・ メルコスル域外からの輸入豚肉に対し、現行13%の関税を35%に引き上げ。ま
 たブラジルとの関係で、廉価な鶏肉輸入に対する対抗措置の実施
・ 国内の皮革加工産業保護などのため事実上原皮の輸出ができなかった生産者、
 食肉処理加工業者に対し、輸出税の課税なしで1百万頭分の原皮の輸出容認
・ 穀物サイロの建設に際して金利7%の融資措置。これにより生産者は穀物の有
 利な販売が可能になる。
・ 牛肉産業振興の新機関設立の法律制定に向けての取り組み促進(国会の法案審
 議を待つ状況)
・ 肉牛の増頭を図るための雌牛保留対策として、雌牛購入とその保留に対する融
 資措置
・ 国内と輸出向けで設定されている牛肉の品質、安全性のダブルスタンダード解
 消に向けた取り組み
・ 口蹄疫ワクチンバンク整備に係る入札の実施
・ 食肉処理加工業者の脱税対策として、国立農牧取引管理事業団(ONCCA)
 の機能を強化し、加工施設の生産状況をONCCAが一元的に管理するシステム
 の着手
・ 各種災害に対応可の災害保障制度創設
・ 地域振興策の推進。内容としてタバコ、砂糖、綿花の生産者に対する生産資材
 費支払いのための国の融資、羊飼養および羊毛生産振興法(仮称)制定の取り組
 み、小規模農家への融資の設定
・ 危機的状況にある乳業界を底上げするため、最低価格保証などを目的とした酪
 農プロジェクト(仮称)の立ち上げ

 今後議会などで議論される必要があるものもあるが、盛りだくさんの具体的な政
策措置内容が発表された。


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