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USDA、家畜排せつ物の発生状況を公表



【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 8月24日発】米農務省(USDA)は先ご
ろ、畜産経営体における家畜排せつ物の発生状況に関するレポートを公表した。こ
れは、5年ごとに行われる農業センサスのデータを基に、ペンまたは畜舎内で家畜
(confined animal:肥育牛、乳用牛、豚、家きんを指す。以下同じ)を飼養する
経営体において発生する家畜排せつ物の量と、経営内農地への還元可能量とを比較
したものである。

 米国では、こうした畜産経営体の数が、82年の43万5千戸から、97年には21万3
千戸にまで半減しているが、大規模化の進展により、飼養頭羽数(家畜単位換算)
は、10%増加し、家畜排せつ物の発生量も、約20%増加している(97年で、窒素換
算123万トン)。

 一方、経営内の農地面積は、97年時点で7千3百万エーカー(約3千万ヘクター
ル)にまで減少していることから、経営内農地への還元可能量を超える家畜排せつ
物(窒素換算)の発生量が、全体の約6割にも上るとUSDAは推計している。ま
た、このような余剰窒素発生量は、大規模層になるほど顕著に増加しており、土地
基盤の拡大を伴わない大規模化が進展していることがうかがえる。

 現在、米国における畜産経営に対する環境規制は、主として、水質保全法(Clean 
Water Act)にその根拠を求めることができる。同法規則によると、点源汚染源と
して指定された大規模畜産経営体(CAFO:1,000家畜単位以上。水質規制上問
題のある300家畜単位以上の経営体を含む)は、家畜排せつ物処理施設を設置する
ことなどにより、全国汚染物質排出排除システム(NPDES)の下での経営許可
を受ける必要がある。

 USDAは、こうしたCAFOの数が、82年の約5千戸から、97年には約1万1
千戸にまで増加しており、余剰窒素発生量の半分以上がCAFOによるものと推計
している。地域的に見ると、窒素発生量は、飼養頭羽数(家畜単位)の約半分を占
める中央部よりも、家畜単位当たりの窒素排せつ量が多い家きんの飼養地帯である
南東部の方が多く、全余剰窒素発生量の約3割を占めるとしている。また、余剰窒
素を発生させる畜産経営体は、全米の約4分の3の郡において存在するなど、広範
囲に及んでいることも明らかにしている。

 USDAは、このような地域における、経営外の農地への還元や、これに代わり
得るような処理を促進するためのメカニズムが必要であると指摘している。また、
全国レベルでの取り組みとして、96年農業法に基づき実施されている環境改善奨励
事業(EQIP:農家に対する技術、財政および教育的支援措置)への参加を示唆
している。さらに、米環境保護庁(EPA)との共同戦略の1つとして、前述のN
PDESによる経営許可の対象範囲を、CAFO以外の小規模経営体にも拡大する
意向を明らかにしている。

 以上のように、本レポートは、経営の内外における適正な処理・利用の重要性と
併せて、環境規制強化の必要性をも浮き彫りにする内容となっている。


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