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アルゼンチン、食肉業界で尾を引く口蹄疫問題


【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 12月7日発】今年8月、アルゼンチンの
フォルモサ州で抗体陽性牛が発見されたことに端を発した口蹄疫問題は無事終息し、
10月、同国は国際獣疫事務局(OIE)から口蹄疫ワクチン不接種清浄国の衛生ス
テータスに変更なしとされた。しかし取引の現実は厳しく、その後の食肉業界、特
に輸出主体の食肉処理加工業者の経済的ダメージは大きい。このことが直接の原因
ではないようだが、業界大手でしにせのセパ(CEPA)社が債権者総会に入り、
世界から視察者が多かったブエノスアイレス市近郊のポンテベドラ工場閉鎖も取り
沙汰されている。

 アルゼンチン産牛肉の輸出先は、次の通り大別される。
@カナダと米国のNAFTA市場
AEUへの高級肉ヒルトン枠の市場
Bチリとブラジルの南米市場
C台湾、イスラエルなどの新規市場

 @の市場は現在閉鎖中。既に口蹄疫査察ミッションが来訪し、年内にも同地域向
け輸出が解禁されるうわさだが、NAFTAから輸出衛生条件の提示などの結果待
ちである。Aは従来の衛生条件下で輸出できる市場。ただし、最近フランスに端を
発した牛海綿状脳症(BSE)の問題でEUの牛肉消費が激減し、EU向けの牛肉
輸出は数量、価格とも下落し、アルゼンチンの輸出業者にはさらに頭の痛い状況が
増えた。Bは今回の問題で新しく定められた衛生条件下で輸出可能な市場。特に@、
Aの市場が短期的に見通せない中、アルゼンチンが唯一頼れる輸出先といえる。事
実、今年8月からチリへの生鮮肉輸出は増加傾向で推移している。Cについては、
台湾は市場を閉鎖しており、イスラエルは新しく定められた衛生条件で輸出可能な
市場である。

 2000年7〜10月のアルゼンチンの輸出相手国別牛肉輸出量(製品ベース。以下同
じ)を99年同期と比較すると、例えばドイツ向けのヒルトンカットは6,659トンで、
むしろ99年の5,837トンを14%上回っている。次に生鮮肉(ヒルトンカットを除く)
については、カナダ向けは4,051トンと前年同期比で42%減、米国向けが3,212トン
で同51%減。チリ向けは7,998トンで同30%減だが、これはチリが低価格カットで
価格競争力の強いサプライヤーにシフトしている要因のほうが大きい。台湾向けは
230トンで83%減。特記事項としては、イスラエル向けが123%増と大幅な伸びを見
せたこと、ロシア向けが2,464トン、アルジェリア向けが2,076トンと新規市場が登
場したことである。

 なお、フランス資本の大手スーパーマーケット「カルフール」が、経営不振の食
肉処理施設を買収し、EUを含む世界28ヵ国にBSEフリーのアルゼンチン産牛肉
の販売を開始するとの動きが見られる。このことは、数年前から物事が動いていな
い牛肉振興法案にうんざりしたアルゼンチンの食肉業界には福音である。


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