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BSE問題の影響で、EUの生体牛価格が急落


【ブラッセル駐在員 山田 理 12月8日発】11月30日時点の生体100s当たりのE
U平均成牛価格(市場参考価格)は、前月末に比べて13.4%安の115.1ユーロ(約
1万1,200円:1ユーロ=97円)となり、最近10年間で最低の水準に落ち込んでい
る。

 特に、フランスでは、騒動の発端となったBSE感染疑惑牛肉の回収事件が報道
された10月末から、また、ドイツでは、初めてBSE感染が確認された11月後半以
降、価格低下が著しく見られる。両国の11月末の成牛価格を前月末と比較すると17.
5%安(フランス)および24.7%安(ドイツ)と記録的な大暴落となっている。この
EUの2大牛肉生産国における成牛価格の低落がEU平均価格を大きく押し下げる
最大の要因となっている。また、牛肉の消費減退の広がりとともに、価格低下の動
きも周辺諸国に拡大し、ベルギーやイタリアなどにも飛び火し、EU平均価格の低
下を加速させている。

 価格急落を受けて、EU委員会は、矢継ぎ早に価格対策を打ち出した。EUの牛
肉管理委員会は11月17日、最も大きな影響を受けている経産牛から得られた牛肉
(カウミート)について、民間在庫補助の発動を承認した。詳細は以下の通り。
 @交付申し込み期間は、2000年11月27日から2001年2月2日まで
 A期間は3ヵ月(最大6ヵ月まで延長可)
 B補助単価は3ヵ月の保管に対し、枝肉換算1トン当たり472ユーロ(約4万5,8
  00円)、保管延長に対しては1日当たり0.93ユーロ(約90円)

 また、11月25日には、カウミートに対する輸出補助金が100s当たり20ユーロ(約
1,900円)から46ユーロ(約4,500円)と2倍以上の水準に引き上げられた。

 さらに、12月4日に開催された緊急農相理事会では、2000年1月1日から肉骨粉
の飼料使用の一時禁止(6ヵ月間)などとともに、@30ヵ月以上の牛から得られた
牛肉の買い上げ・廃棄、A牛飼養農家の経営状況を配慮し、牛肉関連の奨励金の前
渡し比率を60%から80%に引き上げなどの価格対策が採択された。

 牛肉の買い上げ・廃棄の対象ついては、BSE検査を受けていない枝肉等が想定
されているが、市場の価格状況によっては、BSE検査を受けたものを対象に含め
ることも検討している。本対策の詳細については、12月12日の牛肉管理委員会に提
案され、協議されることとなった。総費用は12億5千万ユーロ(約1,213億円)に
上るとみられており、EUが70%、各国が30%の負担となる。膨大な経費負担に対
し、BSE感染リスクの低い国を中心に不満が噴出しており、EU委員会は一部の
国を対象から外すよう検討を迫られている。

 成牛価格回復の目途は立っておらず、これら一連の対策の効果も、今のところは
っきりしていない。BSEの発生が少ないことに安住し、完全なBSE感染防止対
策を取らなかった付けは、あまりにも大きなものとなっている。


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