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2000年の10大ニュース


【シンガポール駐在員事務所】小林 誠、宮本 敏行

1.生体牛をめぐる豪州との貿易摩擦(フィリピン)
 フィリピンは、衛生上の問題から豪州がフィリピン産果物の輸入を禁止している
ことへの対抗措置として、4月に豪州からの生体牛輸入の一部禁止措置を発動して
いた。さらに農業省は6月、向こう5年間にわたり、豪州からの生体牛の輸入頭数
を毎年前年比で20%ずつ削減する計画を発表した。この陰で、国内最大の肉用牛
肥育業者が不正輸入を行うなどの問題も発生したが、9月に行われた豪州との協議
の結果、2年以内にフィリピン産果物の輸入検査を終了することで両国が合意し、
フィリピン政府は当初計画を緩和し、前年比で5%ずつ削減することとなった。

2.タイの鶏肉輸出量が大幅な増加
 タイブロイラー加工品輸出協会の発表によると、今年第3四半期までの輸出量は、
冷凍鶏肉が前年同期比10.7%増の17万2千トン、鶏肉調製品が32.3%増の5万9千
トンとなっており、いずれも大きな増加となっている。これは、特にEU向け輸出
が、冷凍鶏肉で前年同期比25.4%増の4万9千トン、鶏肉調製品で27.5%増の2万2
千トンと大幅に伸びていることが、主な要因となっている。同協会では今年の輸出
量について、冷凍鶏肉は前年比8.7%増の23万トン、鶏肉調製品は29.2%増の8万
トンと予測している。

3.混乱が続くマレーシアの養豚業界
 98〜99年に豚を介するウイルス性脳炎が猛威を振るったマレーシアでは、需要の
回復から豚価が99年の100s当たり460リンギ(約1万3,800円:1リンギ=30円)
から520リンギ(約1万5,600円)に上昇した。また、ウイルス性脳炎により処分さ
れた豚を対象とした補償金を50リンギ(約1,500円)から120リンギ(約3,600円)
に増額するなど、養豚産業復興に向けた動きも見られている。しかし、ペラ州では、
6月に政府の実施する定期検査により約1,700頭の豚が、新たにニパウイルスに感
染しているとして処分されるなど、同国の養豚業界はいまだ混乱が続いている。

4.フィリピン、米国産鶏肉の輸入を規制
 フィリピンの米国からの鶏肉輸入は、従来のロシア向けが振り向けられたことな
どから、99年には前年の約20倍にまで急増した。フィリピン政府はこれに対し、米
国から輸入される鶏肉の多くが、米国内では需要の低い「もも肉」および「手羽」
であることを勘案し、4月から輸入許可証を「丸どり」のみに与えるとし、事実上
の輸入規制に踏み切った。7月下旬のエストラーダ大統領訪米の直前にも、農業長
官から規制継続が強く進言されたこともあり、同大統領は、米国に輸入規制の継続
を明言したとされる。米国はフィリピンの措置を、世界貿易機関(WTO)の理念
に反するとして反発している。

5.生体牛輸入の伸びが再び顕著に(インドネシア)
 インドネシア国内の牛肉需要に対応するために、豪州からの生体牛輸入の伸びが
再び顕著になっている。輸入頭数は、97年後半に発生した経済危機に見舞われる直
前の96年には、史上最高の37万9千頭を記録したが、98年には3万9千頭にまで激
減していた。最近の輸入増加は、経済の回復が徐々に進むとともに通貨ルピアの下
落が一段落したことや、東ティモール問題をめぐってこじれていたインドネシアと
豪州の2国間関係が好転しつつあることが好材料となっている。インドネシア肉牛
生産者協会は、今年の同国の生体牛輸入頭数を、経済危機以前の95年の水準に迫る
20万頭に達するものと予測している。これまで苦しい経営を強いられてきたフィー
ドロット業界にとっては、事業再拡大の好機が訪れつつあると言えそうだ。

6.鶏肉の統制価格をめぐる動き(マレーシア)
 マレーシアでは、養鶏農家組合と統制価格関係2省の協議の結果、1月から1s
当たり6.0リンギ(約180円)となっていた鶏肉の統制小売価格を、4月から5.4リ
ンギ(約162円)に引き下げることで同意した。養鶏農家は、引き下げた水準でも
再生産が確保されるであろうとして、受け入れを表明していた。その後、鶏肉の小
売価格は上限である統制価格で安定的に推移したが、農家販売価格は下落傾向で推
移した。生産者団体では、農家販売価格に見合う統制小売価格の引き下げを要望し
たものの、政府は統制価格の見直しは行わないとした。

7.学乳事業をめぐる論争が加熱(タイ)
 タイ政府は、2000年の学乳事業の実施に当たり、余乳対策も考慮して、タイ酪農
振興公社(DFPO)など国産生乳の購入に大きく貢献する乳業会社から、UHT
牛乳(日本のLL牛乳に相当)を購入する計画を発表した。乳業会社はコスト削減
のため、輸入粉乳類からUHT牛乳を製造して学乳用とすることが多く、皮肉にも
余乳対策の一環たる学乳事業が、逆に余乳を生じさせる大きな要因となってしまっ
ている。学乳事業を舞台として、余乳問題の拡大が危惧されているほか、存続が危
ぶまれているDFPOの事業参画の是非も問われており、本事業に対する論争は年
々熱を帯びてきている。

8.変ぼうするシンガポールの豚肉流通
 シンガポール政府の公表した99年の貿易統計によると、これまで9割以上のシェ
アを占めていたマレーシアからの生体豚の輸入量は、同国における豚を介するウイ
ルス性脳炎の発生に伴う輸入禁止措置により、前年比79.9%減と大幅に減少してい
る。一方、これに代わりEUなどからの冷蔵・冷凍豚肉の輸入量が急増しており、
シンガポールにおける豚肉流通の変ぼうぶりを映し出す結果となっている。また、
流通コストの上昇に伴い、99年の豚肉の平均小売価格は、前年比20%高の1s当た
り9.29シンガポールドル(約608円:1シンガポールドル=65.5円)と大幅な増加
が見られた。

9.経済危機後の成長をけん引する畜産業(フィリピン)
 フィリピン農業省農業統計局は、2000年1〜9月の農業生産額を公表した。畜産
分野では、養鶏部門が前年比6.2%増の256億ペソ(約614億円:1ペソ=2.4円)、
養鶏を除く他の畜産分野が2.8%増の254億ペソ(約610億円)となっている。フィ
リピン農業省は、これら畜産部門が伸長した理由として、安価な米国産鶏肉(部分
肉)の輸入を抑える努力の奏功や、養豚における収支改善を挙げている。成長を続
ける農畜産業は、経済危機後の同国経済を活性化させる役割を担いつつあるが、政
局の混迷や失業率の増加などから、第4四半期以降の成長を危ぶむ声も聞かれてい
る。

10.タイ、国内初の余乳処理施設に期待
 タイ酪農業協同組合は、タイ中部のロッブリー県に、政府のバックアップで国内
初の乳児用粉ミルク製造工場を建設する計画を発表した。タイでは各学校が夏期休
暇に入る期間、1日当たり200トンの余乳を生じ、これが深刻な供給過剰を引き起
こす大きな要因となっている。同国では酪農家戸数が増加傾向にあり、その数は今
後10年で15〜20%増加すると予測されている。生乳生産量の増加により、余乳処理
対策がますます困難となる中、輸入品に対抗し得る国産品を育成する面からも、今
後の対策の目玉として、この建設計画には業界から大きな期待が寄せられている。


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