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減少した99年のチリ牛肉生産



【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 5月5日発】チリ農業省によると、97
年の同国の牛飼養頭数は409万8千頭、99年の牛と畜頭数は、94万4千頭であった。
99年の牛肉生産量(枝肉ベース)は、干ばつによる飼料不足などから、前年比12
%減の22万6千トンとなった。

 牛肉輸入国であるチリのここ10年における牛肉需給の推移を見ると、消費量の伸
びが生産量の伸びを上回って推移してきたことから、輸入量の増加が顕著である。
99年の1人当たりの牛肉消費量は、景気後退による影響で、前年比6.5%減の23.
2kgとなったものの、92年と比べ5kg以上増加している。

 チリ食肉処理加工施設協会(AFCC)がまとめた報告書によれば、99年の牛
肉(骨抜き)輸入量は、前年比19%増の7万7千トン(枝肉ベースで11万6千トン)
となった。このうち約7割を占める冷蔵肉の輸入量は、前年比で37%増の5万7千
トンとなったが、1トン当たりの平均輸入額が23%安となったことから、輸入額は
1億2千6百万ドル(約136億円:1ドル=約108円,CIFベース。以下同じ。)
と5.3%増にとどまった。一方、冷凍牛肉の輸入量は、前年比12%減の2万1千ト
ン、1トン当たりの平均輸入額は28%安、輸入額は37%減の3千30万ドル(約32億
7千万円)となった。

 冷蔵・冷凍牛肉(骨抜き)の輸入国のシェアは、メルコスル(南米南部共同市場)
4ヵ国が99%を占める。そのほかの輸入国として、ニュージーランド、豪州、カナ
ダがある。メルコスルからの輸入量は、アルゼンチンが前年比18%増の3万9千ト
ン、パラグアイが6.9%増の1万7千トンであった。また、通貨切り下げで輸出競
争力を持ったブラジルが8倍の1万7千トンと大幅な伸びを示す一方、65%減の4
千トンとなったウルグアイの落込みが顕著であった。

 99年の去勢牛生体平均価格は、前年比6.6%減の1kg当たり0.99ドル(約107
円)となった。これは、アルゼンチンより約20セント(約22円)高い水準である。

 なお、同報告書では、隣国アルゼンチンがワクチン不接種口蹄疫清浄国としての
地位を獲得すれば、同国からの肥育用、繁殖用、と畜用の生体牛輸入が可能となる
としている。今後は、牛飼養頭数約5千万頭を誇り、肉牛の品種が豊富で、牧草条
件などに恵まれるアルゼンチンを肥育用素牛などの供給国と位置付けることで、チ
リ畜産業界の発展が図れるものと期待している。

 また、ブラジルやパラグアイにおける口蹄疫清浄化に進展が図られ、メルコスル
からの生体牛輸入が本格化すれば、従来、比較的高値で安定していた国内生体取引
市場は、価格競争を余儀なくされる。牛肉輸入国であるチリにとっては、生体牛を
輸入し、集約的肥育により国内で最終的な仕上げを行うなど、いかにして国内供給
量を増加させるかが今後の課題であるとしている。


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