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亜国農牧庁長官、農牧展で農業競争力強化を力説


【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 8月16日発】アルゼンチンは98年の新
興市場の金融経済危機以来、経済低迷が続いており、99年12月に発足したデ・ラ・
ルア政権の増税策も功を奏さず、2000年末に国際通貨基金(IMF)から多額の金融
支援を受ける事態になった。2001年3月に再登板したドミンゴ・カバロ経済大臣は
増税と歳出削減による財政再建策や米ドルとユーロの平均値に自国通貨ペソを連動
させる通貨バスケット制を導入し、当面の国内経済活動は1米ドルを1ペソとする固
定相場制を維持しつつ、輸出業者には同バスケット制を前倒しで適用し、輸出競争
力の回復などを目指す一連の緊急経済対策を打ち出した。しかし、このような対策
にもかかわらず、経済危機に対する懸念は払拭されず、7月中旬に政府は「財政赤
字ゼロ政策」を発表し、高金利の国債に歳入を頼ることをやめ、公務員給与や年金
支給額の削減などの歳出削減対策と脱税防止などの歳入対策に乗り出した。こうし
た歳出削減などを条件に再度IMFからの融資が準備されているが、同政策の実現性
に対する不安感から金利は高水準のまま推移している。

 このような経済不安の中で、第115回国際農牧工業展は、口蹄疫の発生で最後ま
で開催の是非が議論されたが、結局偶蹄類の家畜が出展されない形で開催されるこ
ととなった。同農牧展の呼び物の肉牛が出展されない異例の開催とあって一般参加
の客足も遠のいたようだ。
  
 恒例の公式演説でマルセロ・レグナガ農牧庁長官は、アルゼンチンの食糧輸出の
潜在力は十分としながらも、低金利融資などの農業保護政策で守られた先進国の農
業競争力は強く、また消費者の品質や安全性に対する要求はさらに厳しく、以前と
状況が異なることを農業セクターは理解すること、農業は国家の基幹輸出産業であ
り続け、先端技術の導入などによりコストを下げ、今後さらに競争力をつける必要
性があることを強調した。今回は経済不安のため、具体的な農業政策に乏しかった
が、農業に競争力をつけるための計画の一環として、99年1月に導入され、その存
続が議論されていた推定最小所得税と農業融資の借入金の利子に対する課税を農業
者について廃止したことは注目できる。
  
 また、同席上、デ・ラ・ルア大統領は最後に口蹄疫問題に言及し、すでに実施中
の第2回目のワクチン接種で今後発生件数は大幅に減ることを期待する一方で、周
辺国が同じ家畜衛生ステイタスになく、地域としての防疫対策の取り組みが未整備
なうちにワクチン不接種清浄国を宣言したのは、状況を軽く考えすぎていたと反省
を示し、今後同国の家畜衛生ステイタスに対する考え方を垣間見せた。


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