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イギリス、農業政策見直しのための委員会を設置


【ブラッセル駐在員 山田 理 8月16日発】イギリスでは、今年2月の口蹄疫
の発生からすでに6ヵ月近くが経過したが、直近1週間における1日当たりの発生件
数は3件となっており、今のところ完全終息のめどは立っていない。総発生件数は
15日までに1,954件に上っている。防疫措置としてと畜された家畜は375万頭に上り、
このほか過密飼養を避けるため動物福祉の観点から140万頭がと畜されるなど、同
国の農畜産業は大きな打撃を受けた。

 こうした中、イギリス環境・食料・農村地域省は8月9日、現行の農業政策の見直
しを行うため、3つの独立した委員会を設置することを公表した。これらの委員会
は定められた期間内に勧告または報告書を取りまとめ、これをブレア首相およびブ
ランケット大臣に提出することとなる。各委員会の概要は、以下のとおりである。

@口蹄疫大発生に関する委員会
 
 今回の口蹄疫大発生の教訓を踏まえ、家畜伝染病の発生時における政府の取るべ
き対策に関する勧告を取りまとめる。口蹄疫の終息後に審議を開始することとし、
6ヵ月を目途に勧告の取りまとめを完了する。

A科学的検討委員会

 口蹄疫の大発生で持ち上がった感染や防疫対策などに関する複雑な問題(ワクチ
ンの使用問題も含む)について、科学的な観点からの検討を行う。イギリス学士院
が中心となり、獣医師およびウイルスや伝染病の専門家だけでなく、消費者や農業
者の代表も加えた審議が行われる。2002年の夏までに勧告をまとめることが予定さ
れている。

B農業および食料の将来政策に関する委員会

 政府に対し、いかにして競争力を有し、持続的かつ多様な農業・食料部門を構築
するかを助言する。

 報告書の取りまとめは、幅広い関係者からの助言を受けながら進められ、その過
程を一般に公表することが想定されている。諸外国における農業改革の成功例に関
する知識を有する者だけでなく経済専門家やEUの法令・政策に関する専門家も招
致できることとされた。報告書は2001年12月31日までに取りまとめられる予定であ
る。

 一方、イングランドおよびウェールズにおける最大の農業団体である全国農業者
連盟(NFU)は先般、将来に向けた戦略計画を公表した。この計画は、持続的な
農業の実現に向け、農業の収益性回復に主眼を置いたものとなっている。

 同国の農業における最優先課題は、一日も早い口蹄疫の撲滅であることは言うま
でもないが、これと並行して深刻な打撃を受けた農業の再生へ向けた動きが始まっ
ている。
 

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