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ブラジル南部で口蹄疫が再発



【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 5月16日発】ブラジル農務省は5月8
日、国際獣疫事務局(OIE)に対し、ウルグアイとの国境に近いブラジル南部リ
オグランデドスル(RS)州サンタナドリブラメント市の1農場で口蹄疫の発生が
確認されたことを通報した。これによると、牛15頭に口蹄疫の感染が確認され、口
蹄疫ウイルスは血清型Aと特定された。

 RS州とサンタカタリナ(SC)州で構成されるブラジル南部2州は、98年のO
IE総会でワクチン接種清浄地域として認定され、ブラジル農務省は2000年4月下
旬、南部2州をワクチン不接種清浄地域として宣言し、ワクチン接種の中止を決定
した。しかし、RS州ジョイア市で2000年8月、口蹄疫が発生したため、OIEに
よる南部2州のワクチン接種清浄地域としての衛生ステータスは留保されている。
ジョイア市に端を発した口蹄疫の防疫対策として、感染した家畜および感染の疑わ
れた家畜11,067頭が殺処分の対象となった。

 今年3月中旬には、隣国アルゼンチンで口蹄疫の発生が確認され、警戒感を強め
たRS州政府は、同州におけるワクチン接種の必要性を訴えていた。これに対し、
ブラジル農務省は、南部2州のワクチン不接種清浄地域としての国際的な認定が遅
れることや同国の主要養豚州であるSC州の豚肉輸出に支障がでることが予想され
るなどワクチン接種については慎重に検討すべきとの見解を示していた。

 しかし、隣国ウルグアイで4月下旬、口蹄疫の発生が確認され、同国で猛威を振
るった病気がブラジルのRS州境界に達すると、ブラジル農務省はこの事態を重く
見て、RS州の国境地域におけるワクチン接種計画を発表した。さらにブラジル農
務省は5月9日、RS州で再発した口蹄疫のまん延を防止するため、州内の牛およ
び水牛全頭にワクチン接種を行う決定を下した。

 RS州への口蹄疫撲滅支援策として、ブラジル農務省は、国境地域でのワクチン
接種についてはワクチンを無償で提供したが、それ以外の地域については同様の支
援を行わないとした。しかし5月15日、小規模生産者に対してはワクチンを無償提
供するとともに、口蹄疫に感染した家畜の殺処分を行う生産者に対する補償金を予
算措置したと発表した。

 RS州の口蹄疫発生による各国の輸入制限措置として、ブラジル農務省は5月10
日現在で少なくとも、イギリスがブラジル産牛肉の輸入を、イスラエルとチリがR
S州産牛肉の輸入をそれぞれ中止し、また、ロシアがRS州における口蹄疫の状況
が明らかになるまで同国向け豚肉の最大の供給州であるSC州からの豚肉輸入を中
止したと発表した。

 メルコスルで拡大する今回の口蹄疫発生件数は、OIEによると、アルゼンチン
では5月5日現在で566件、ウルグアイでは5月9日現在で348件に達している。ま
た、ブラジルのRS州で5月10日、2件目となる口蹄疫の発生が確認されたと報じ
られた。

 メルコスルにおける口蹄疫対策について、パンアメリカン口蹄疫センター(PA
NAFTOSA)のコレア事務局長は、これまでメルコスル諸国は自国の国境監視
に終始してきたが、各国が口蹄疫清浄地域を拡大した反面、メルコスル圏内の人や
畜産物の移動が増加しており、今後は国境を越えた共同対策が必要であるとコメン
トしているように、メルコスル諸国がいかに結束して口蹄疫問題に対処するか問わ
れるところである。


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