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USDA、環境保全における教育の重要性を指摘



【ワシントン駐在員 樋口 英俊 5月16日発】米農務省(USDA)は先ごろ、
生産者の環境保全への取り組みに関する報告書を公表した。この報告書は、ネブラ
スカ州、インディアナ州、イリノイ州、アイオワ州などの全米10ヵ所の分水界周辺
地域における生産者を対象として、農業経営の内容から環境保全の方法などに関す
る詳細な調査に基づきとりまとめられたものである。

 これによれば、生産者による新たな環境保全への取り組みに影響を与える一般的
な要因として、天候や土地条件の多様性、取り組みによる収益見込み、経営規模そ
の他の経営条件などが挙げられている。一方、バイオ技術のような情報集約的な環
境保全技術の導入については、調査地域にかかわらず、生産者への教育が極めて重
要な役割を担っていることが明らかとなった。このため、同報告書では、最新技術
の専門化や高度化を踏まえて、政府機関や大学の指導・普及機関(エクステンショ
ンサービス)などによる技術支援、コンサルティングなどを強化していくことが、
環境保全事業を推進していく上でのカギになると指摘している。なお、情報集約的
な環境保全技術は、経験豊富な生産者に受け入れられにくい傾向がみられたことに
ついて、USDAでは、これらの生産者が代替となる方法に関する知識を有してい
るか、経験の浅い生産者に比べて保守的であるためと分析している。

 また、農地の所有者と賃貸者との間で、環境保全への取り組みに大きな違いが示
されなかったことに対して、USDAでは、多額の負担が必要でなかったことを要
因の1つとして挙げている。

 畜産と耕種作物の複合経営体では、土壌分析などの土地の栄養状況に関する情報
集約的な管理を行わない傾向が見られる一方、肥料としてのたい肥の利用が多いと
している。こうした状況については、今後施肥量の規制につながる制度が導入され
た際には、当然変化を余儀なくされるものとみられる。

 なお、USDAの主な環境保全事業としては、土壌浸食などで保全の必要性が認
められる農地の保有者に対して、当該農地の休耕に対して助成を行う土壌保全留保
計画(CRP)や、土壌、水質その他の自然資源を保全するため、生産者に対して、
技術、財政および教育的な支援を行う環境改善奨励計画(EQIP)などがある。

 内容自体は充実してきたとの評価がある一方、環境保全に関する自然資源保全局
(NRCS)や農業研究局(ARS)の技術担当者および研究者の人員や生産者へ
の補助の削減から、これらの政策の効果が生産者に届いていないとの批判もなされ
ている。次期農業法についても、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)やその他
の畜産団体などが環境保全を重要課題の1つに挙げており、今回の報告などを踏ま
えた議論が行われていくものと思われる。


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