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鶏肉をめぐり米国とのあつれき深まる(インドネシア)


【シンガポール駐在員 宮本 敏行 11月22日発】インドネシアでは、養鶏農家の
強い要望で米国産鶏部分肉(もも、手羽)の輸入禁止措置が継続されており、その
速やかなる撤廃を求める米国との間であつれきが深まっている。 

 インドネシア政府は、安価な米国産鶏肉の流入から国内の養鶏業者を保護する目
的で、国産品とは実質的に競合しない丸鶏の輸入を認める一方、昨年6月以降は部
分肉の輸入を制限、今年1月には完全な輸入禁止措置をとった。同国政府は、この
措置の発動を決定付けた要因として、米国産鶏肉における「ハラル」(イスラム教
にのっとって製造された食品)遵守の不明確さを挙げている。人口の9割をイスラ
ム教徒で占める同国にとって重要な論拠となっている。これに対し、米国は報復措
置として昨年7月、インドネシア産のエビおよびロブスターの輸入を禁止した。米
国はこの理由を、インドネシアがウミガメの生態系に配慮しない方法でエビやロブ
スターの養殖・捕獲を行っているためとしており、両国の農水産物貿易をめぐる攻
防は一層混迷の色を深めている。 

 従来「むね肉」を好む米国は、スケールメリットを生かして「もも」や「手羽」
といった低需要部位を安価で輸出できることから、近年は経済成長を続けるアセア
ン諸国への輸出を拡大している。一方、その標的となったインドネシア、タイ、フ
ィリピンおよびマレーシアの4ヵ国は昨年、アセアン養鶏業者協会を組織し、鶏肉
の輸入関税の引き下げや輸入量の増加を求める米国に対し歩調を合わせて対抗して
おり、そのチームワークは次第に強まっているとされる。

 そうした状況の中、米国産鶏肉の輸入禁止措置の継続を求めるインドネシアの養
鶏業者の声は益々高まっている。養鶏業の垂直統合が進んでいない同国では多くの
養鶏農家が零細であり、安価な輸入鶏肉の流入はこうした零細農家の経営に決定的
な打撃を与えることも予想される。有力な養鶏組合の試算によれば、もし米国産鶏
肉の輸入禁止が撤廃されれば、市場の鶏肉価格は現在の1s当たり6,500ルピア
(約85円:100ルピア=1.3円)から同3,500ルピア(約46円)へほぼ半減する恐れが
あるとしている。 

 一方、安価な輸入鶏肉の脅威にさらされて養鶏農家の経営意識にも変化が現れて
おり、大手インテグレーターを中心とした養鶏業界の再編成の必要性を説く意見も
聞かれ始めている。大手インテグレーターは、ひなの供給を一手に担う立場にあり
ながら、自社の利益を優先するあまりひなの供給動向を明らかにしないなど、業界
の中における評判は必ずしも芳しくはない。しかし、同国の養鶏業界がグローバル
な規制緩和の中で、海外からの輸入品に対抗できる産業構造を構築するためには、
大手インテグレーターと養鶏農家の歩み寄りを模索すべき段階に入ったことを理解
し始めたものとみられる。 

 最近はイスラム諸国の米国への不信感が強まっていると言われており、事態の解
決には、両国政府の努力と国民の相互理解が必要と思われる。また、米国によるイ
ンドネシアへの鶏肉市場開放の圧力は、長期的に見れば同国における養鶏産業の構
造強化にも寄与する可能性もあると思われる。 


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