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ブラジル、全国規模の口蹄疫撲滅計画を展開


【ブラッセル 玉井 明雄 8月7日 発】ブラジル農務省は、2005年までの口蹄
疫撲滅を目指し、全国を南部、中西部、東部、北部、及び北東部の5畜産圏に分
割した口蹄疫撲滅計画を展開している。

 ブラジル農務省によると、同国では、1965年、口蹄疫のコントロールを主目的
とした口蹄疫対策が南部のリオグランデドスル州を皮切りに、その後、南部や中
西部など各州で実施された。また、1968年〜1982年には、米州開発銀行(IDB)
の融資を受けた全国規模の口蹄疫対策、1987年以降は、国際復興開発銀行(IB
RD)の融資を受けた家畜疾病管理計画がそれぞれ実施された。

  1992年には、ブラジル農務省、各州農務局、および肉牛生産部門の代表など
がパンアメリカン口蹄疫センターの協力のもと、家畜疾病管理計画の見直しを行
った。これにより、2005年までの口蹄疫撲滅を目標とし、全国を前述の5畜産圏
に分割した上で、各圏ごとに衛生ステータスの向上を図る口蹄疫撲滅計画が具体
化された。

 同計画の実施に当たり、その柱となる口蹄疫ワクチン接種については、ブラジ
ル農務省布告第121号(1993年3月29日付け)により、2歳以上の牛および水牛に
対しては年1回、2歳未満の牛および水牛に対しては、生後4ヵ月に達するまで
に第1回、その3ヵ月後に第2回、その後、2歳に達するまでは6ヵ月ごとに接
種を行うことが義務付けられている。

 ブラジル農務省は、同計画の実施に当たり、その第1段階として、前述のワク
チン接種キャンペーンを畜産農家の技術水準が高く比較的経営基盤が安定してい
るとされる南部から実施し、次いで中西部、東部へと拡大した。この結果、これ
までの国際獣疫事務局(OIE)総会で、@98年に南部2州(サンタカタリナ、
リオグランデドスル)が、A2000年に南部・中西部の1連邦区と5州(ブラジリ
ア連邦区、ゴイアス、サンパウロ、マットグロッソ、ミナスジェライス、パラナ
)が、B2001年に東部・中西部の6州(リオデジャネイロ、エスピリトサント、
バイア、セルジッペ、トカンチンス、マットグロッソドスル)が、それぞれワク
チン接種清浄地域に認定されている。なお、ブラジル農務省は2000年5月、南部
2州でワクチン接種の中止に踏み切ったものの、同年8月にリオグランデドスル
州で口蹄疫が発生したため、南部2州のワクチン接種清浄地域のステータスは留
保されている。

 ブラジル農務省によると、現在、OIEにより認定を受けている同国の口蹄疫
清浄地域の総面積は全土の約4割を占め、同地域内で飼養されている牛および水
牛の頭数は全体の約7割に相当する。さらに、同省では、北部のロンドニア州を
今年末か来年に、同じ北部のパラ州を来年末頃までに、OIEに対しワクチン接
種清浄地域として申請する意向であるとしている。

 ブラジルの大手調査会社の統計では、全国の牛および水牛の全飼養頭数に占め
る口蹄疫ワクチン接種頭数の割合は1994年の65%から2001年には90%を超えるま
でに増加し、同期間における全国の口蹄疫発生件数は2,093件から37件へと大幅
に減少している。

 また、ブラジル農務省プレスリリース(7月18日付け)によると、同国リオデ
ジャネイロ州ドゥーケデカシアス市にあるパンアメリカン口蹄疫センターで今年
11月25日〜12月6日、OIEの口蹄疫その他疾病委員会が開催される。これは、
同委員会がOIEのパリ本部以外で開催される初めてのケースであるという。同
委員会の開催が、ブラジルにおける口蹄疫撲滅への取り組みを国外にアピールす
る好機ととらえられている中で、同国の口蹄疫清浄地域拡大に向けた動きが注目
されるところである。

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