ALIC/WEEKLY


好調を維持するブラジルの牛肉輸出


【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 12月4日発】 ブラジル開発商工省貿易局に
よると、2002年1〜10月における同国の牛肉輸出量(製品重量ベース。冷蔵肉、
冷凍肉、および加工肉など)は、前年同期比14.5%増の46万6千トン、同輸出
額(FOBベース)は5.8%増の8億8,440万ドル(約1,105億5千万円:1ドル
=約125円)となった。
 
 中でも、生鮮肉(冷蔵、冷凍)の輸出量は、前年同期比13.0%増の33万3千
トンで全輸出量の約7割を占めるが、これを国別で見ると、最大の輸出先であ
るチリは29.3%増の5万7千トンとなった。この要因としては、チリが、アル
ゼンチンでの口蹄疫発生で2001年3月以降、同国産牛肉の輸入を停止したため、
主要な供給元がシフトしたことなどが挙げられる。チリに次ぐ輸出先としては、
サウジアラビアが約 2.1倍の3万7千トン、エジプトが 10.3%減の3万1千
トン、オランダが23.8%増の3万トン、ロシアが約19.3倍の2万7千トンとな
った。

  また、米農務省が発表したブラジルの牛肉需給動向(枝肉重量ベース)によ
ると、同国の牛肉生産量は、97年以降一貫して増加し、2001年は前年比 5.8%
増、同年の輸出量は 52.0%増と著しく増加した。また、2002年の生産量は、
前年比 3.5%増の713万6千トン、2003年は 738万5千トンに達すると見込ま
れている。こうした増加に伴い、輸出量も増加が見込まれ、2002年は12.0%増
の83万8千トン、2003年は10.4%増の92万5千トンと予測されている。ブラジ
ルの牛肉輸出が好調な背景としては、自国通貨レアルが安値で推移する為替動
向、低い生産コスト、生産能力向上への投資の増加などが挙げられている。ま
た、ブラジルの口蹄疫清浄化に対する信頼性の高まりが、欧州市場におけるシ
ェアの拡大やエジプト、ロシアなど新規市場への進出を可能にしたとしている。

  口蹄疫清浄化の動きとしては、ブラジル農務省が11月27日付けのプレスリリ
ースで、国際獣疫事務局(OIE)が同27日、プラチニデモラエス農相に対し、
南部2州(サンタカタリナとリオグランデドスル)の口蹄疫ワクチン接種清浄
地域としてのステータスの回復を伝えたと発表した。同省によると、これは、
リオデジャネイロ州ドゥーケデカシアス市で11月25日から開催されたOIEの
口蹄疫その他疾病委員会で決定されたものであるとしている。

  南部2州は、98年のOIE総会でワクチン接種清浄地域として認定されたが、
ブラジル農務省は同2州のワクチン不接種清浄地域としての認定を目指し、
2000年5月、ワクチン接種の中止に踏み切った。しかし、リオグランデドスル
州で同年8月、口蹄疫が発生したため、南部2州はOIEによるワクチン接種
清浄地域のステータスを失っていた。ブラジル農相は、「OIEによる南部2
州のワクチン接種清浄地域としての認定はブラジル産食肉の輸出市場の再開と
新規市場の開拓にとって重要なことである。」と述べている。また、同国では、
来年5月のOIE総会における北部ロンドニア州のワクチン接種清浄地域とし
ての認定が期待されている。衛生ステータスの向上や自国通貨の下落により輸
出競争力が高まる中で、引き続きブラジル産牛肉輸出動向が注目される。

 


元のページに戻る