ALIC/WEEKLY


ブラジルにおいて牛の個体識別制度が始動


【ブエノスアイレス 犬塚 明伸 7月1日発】ブラジル農務省は6月18日、牛
(水牛を含む)の個体識別制度(Sisbov)に基づき、個体登録の実施機関及び経歴
の証明書発行機関として、@プラネジャル社(所在地:リオグランデドスル州、以
下同じ)、Aジェネジス社(パラナ州)、Bブラジル・セルチフィカソン社(サン
パウロ州)、Cセルビソ・ブラジレイロ・デ・セルチフィカソン社(SBC社、サ
ンパウロ州)の民間企業4社を認定した。

 牛の出生からと畜までを識別・管理するSisbovは、ブラジル最大の牛肉輸出先で
ある。EUから、肉用牛の生産農場までを確実に追跡調査できる個体識別制度の確
立を求められたことを受け、農務省が2002年1月9日付け農務省訓令第1号で制定
したシステムである。EU向けに肉用牛を生産する農場は、今年6月末までに登録
することが義務付けられている。(なお、EU以外の諸国へ輸出する生産農場は20
03年12月末までに、また、国内向けについては、口蹄疫清浄州および同ステータス
認定を申請中の州に所在する生産農場は2005年12月までに、それ以外の地域にある
生産農場は2007年12月までに登録することを義務付けている)。また、農務省農牧
防疫局(SDA)は個体識別のための実施機関を認定すると同時に、各機関に登録
された個体情報を全国統一システムに収録し、全国的なデータ・ベースの管理も合
わせて行う。なお、この制度によって生産された牛肉には政府が公認するSisbovの
証明が付されて輸出されることになる。

 今回、農務省がSisbovの実施機関として認定した4社は、すでに30万9千頭の牛
の登録を受け付けているが、その内の55.3%に相当する17万1千頭はプラネジャル
社によるものであり、続いてSBC社が6万頭(全体に占める割合は19.4%、以下
同)、ブラジル・セルチフィカソン社が5万5千頭(17.8%)、ジェネジス社が2
万3千頭(7.4%)の順となっている。

 農務省は2007年までに全国で飼養されている1億6千万頭の牛の登録を目指して
いる。現在、登録件数の半分以上を占めているプラネジャル社は、リオグランデド
スル、サンパウロ、マットグロッソ、マットグロッソドスルおよびゴイアスの5州
において、2003年7月までに150万頭、2007年7月までに全国の飼養頭数の40%に
相当する6,550万頭(年平均1,600万頭)の登録を目標としている。ちなみに、同社
への登録申込料は75レアル(約3,150円、1レアル=42円)、年会費は60レアル(約
2,520円)、1頭当たりの登録料は1レアルとなっている。

 ブラジル牛肉輸出業協会(Abiec)は、「牛肉輸出額の50%弱(2001年の輸出額
は約10億ドル)を占めるEUが要求している牛肉に対するトレーサビリティーを、
2002年7月1日から実施することになるが、農務省による牛の個体登録、経歴証明
発行機関の認定日から7月1日まではわずか12日間と、余りにも期間が短いため、
EU向け牛肉の輸出が一時的に中断する可能性がある。」と危惧している。準備期間
が短くなった背景の一つには、農務省は実施機関に利害関係によって干渉されるこ
とのない独立的な性格を求めたため、すでに個体登録の実績がある品種ごとの生産
者協会などを実施機関の対象から除外したことで認定までが難航した。また、登録
経費を生産者、食肉処理加工業者、消費者の誰が負担するのかなど、いまだくすぶ
り続ける問題が残る中、制度は始動することとなり、Sisbovが順調に運営されるか、
今後注目されるところである。


元のページに戻る