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牛肉チェックオフ制度違憲判決に農務省が上訴(米)


【ワシントン 道免 昭仁 7月11日発】米農務省(USDA)は7月8日、牛肉
のチェックオフ制度を違憲とするサウスダコタ州の連邦地方裁判所の判決(6月21
日)を不服として連邦控訴裁判所へ上訴した。これを受け、控訴裁判所は7月10日、
制度執行中止の命令を猶予することとしたと発表した。なお、実際の上訴はUSD
Aの意向を受け、その代理という形で司法省が行った。

 牛肉のチェックオフ制度は、85年に創設され、肉牛生産者などから販売時に生体
1頭当たり1ドルを賦課金として徴収し、これを原資として、牛肉の販売促進、調
査・研究および各種の情報活動を行うものであり、この制度の運営は肉牛生産者牛
肉振興調査ボード(CBB)が行っている。しかしながら、98年から畜産マーケテ
ィング協会(LMA)などが、当該制度の運営が大規模農家偏重で中小規模(特に
家族経営)生産者に恩恵を与えていないとして、当該制度存続の是非を問う全体投
票(レファレンダム)を実施するための署名を集め始めた。99年にはUSDAに対
し、集めた署名を持って請願書を提出したものの、実施に必要な規定数(全米肉牛
生産者数の10%以上)に達しておらず、全体投票の実施には至らなかった。その後、
LMAなどは、その判断を司法の手にゆだねるべく、サウスダコタ州の連邦裁判所
で訴訟を起こし、結果として今回の違憲判決が下されたのである。

 これらの動きと同様に豚肉のチェックオフ制度継続の是非についても署名活動が
行われた。こちらは、有効署名数に達したことから2000年8月に全体投票が行われ、
廃止が決定された。しかしながら、制度継続を支持する全米豚肉生産者協議会(N
PPC)などがUSDAに対し廃止決定差し止めの提訴を行い、結局は同制度を継
続することで和解に至っている。

 一方、牛肉の同制度存続の審理が続く中、2001年6月には、同制度に基づき実施
される広告に反対するマッシュルームの取扱業者から義務的に賦課金を徴収するこ
とは、憲法修正第1条に保証された表現の自由に反する(判決では、過去に合憲と
されたカリフォルニア州の果樹作物の同様の制度のように、出荷規制などを含む包
括的な措置の一環として、生産者から協調的なルールに基づき賦課金を徴収し、消
費拡大などを目的とした一般的な広告に支出することには妥当性があるが、マッシ
ュルームにはこれらの規制がないことから、取扱業者が賦課金の支払いにつき、協
調して行動する必要はないとの違いが示されたという判断。)として米最高裁判所
が違憲判決を行っている。

 なお、今回の判決においてもマッシュルームと同様に憲法修正第1条に違反した
制度であるとされた。

 これらを受け、全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)ウィス・ウィリー会長は、
制度の執行中止命令が猶予されたことについては歓迎の意を表すとともに、アメリ
カの肉牛生産者のためにこの制度の継続は価値があることと述べた。また、同会長
は、今後の審理で今回の判決が覆されることに期待するとともに、今後も消費拡大
のために国民に対し「夕食には牛肉」と銘打ったプロモーション活動は続けて行く
としている。

 前述のマッシュルームの違憲判決にもあるように、一律で賦課金を徴収すること
に対し、USDAがマッシュルームとの違いについてどのように抗弁し、最終的に
どのような判決となるのか、今後の動向が注目されるところである。


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