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投資戦略で地盤固めを進めるネスレ(フィリピン)


【シンガポール 宮本敏行 9月5日発】 世界最大の食品会社であるネスレ社
は8月27日、20億ペソ(約50億円:1ペソ=2.5円)を投じて、東南アジア地域に
おける拠点であるネスレ・フィリピン社の生産規模の拡大を図ると発表した。こ
れは、昨年に打ち出された30億ペソ(約75億円)の投資計画に続くネスレ・フィ
リピン社に対する事業拡大策となり、一連のプロジェクトは2003年までに終了す
る予定である。
 
 この計画は、ネスレ社のアジア・オセアニアから中東、アフリカにおよぶ地域
を統括するギャレット副社長から発表された。同氏は、これらの投資によって、
東南アジアの乳製品市場における供給センターとしての機能を強化するとともに、
停滞するフィリピン経済の発展を側面から支えることができるとしている。今年
のアセアン諸国への調製粉乳類の輸出額を、前年比25%増の6,300万ドル(約75
億円:1ドル=119円)と見込んでいる。また、同氏は、昨年のネスレ・フィリピ
ン社の売上高が485億ペソ(約1,213億円)に上り、同国企業の上位10社に顔を
出しているのは、同社に対するマネージメントが適切に機能している証拠である
として、ネスレグループ全体の結束が完璧であるとの自負ものぞかせた。
 
 同社の昨年の業績はグループ全体の11位、アセアン地域内では1位となっており、
今後も域内における同社の位置付けは一層高まっていくと思われる。
 
 ネスレ・フィリピン社への投資で生産の強化が予定されているのは、主に「ラ
クトーゲン」および「エブリディ」というブランド名を冠した育児用粉乳とフィ
ルド粉乳(乳脂肪の一部をヤシ油などの植物性脂肪で置換したもの)で、これら
はインドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナムおよびカンボジア
といったアセアン諸国に輸出されている。

 また、同社は近年、新たな輸出アイテムとしてアイスクリームの生産にも着手
している。同社の製品は、単品物はタイおよび香港、業務用バルクパックは米国
や豪州、台湾および中東地域へ輸出されており、今年の輸出額は100万ドル(約1
億2千万円)にまで増加すると予測されている。同社は今後、アイスクリームの
輸出を一層強化していくと表明しており、アイスクリーム生産ラインの充実も今
回の投資プロジェクトの重要な一画を占めるものとみられる。   

 このように東南アジアの乳製品市場をリードする同社であるが、国内でも新た
な市場開拓を怠っていない。同社はこのほど、全国の200校を超える小学校を対
象としたチョコレートフレーバー・ミルクのキャンペーンを開始した。フィリピ
ンの2000年における1人当たりの乳製品消費量(生乳換算)は16キログラムで、
タイの20キログラム、マレーシア(99年)の41キログラムと比較するとさらに増
加する可能性を残している。同国で消費される乳製品の形態は、ほとんどが粉乳
およびれん乳であることから、同社が児童に対して行っているドリンクタイプの
乳製品の普及キャンペーンは、将来的な乳製品需要を掘り起こす意味においても
意義があるものと思われる。

 投資戦略で国内外の基盤固めを進める同社であるが、一方では、アラスカ・ミ
ルク社など他の大手乳製品企業との競合が激化する傾向も見られる。しかし、同
社は、今年上半期の業績は、すでにグループ全体の平均を上回っているとして、
今後の一層の発展に自信を深めている。

 
   

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