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第117回アルゼンチン国際農牧工業展が開催


今年の農牧展は約100万人の来場者で賑わう

 第117回アルゼンチン国際農牧工業展(以下「農牧展」という。)が7月25日から
8月5日まで、首都ブエノスアイレス市で開催された。1875年から始まったこの伝
統行事では、例年、肉牛を中心とした家畜の共進会、商業ブースでの商談、農業機
械の展示、各種セミナー、特産品の販売などが行われる。農牧展を主催するアルゼ
ンチン農牧協会(SRA)の発表によると、今年は、昨年を4割程度上回る 約100
万人が来場し、経済回復を目指す同国にあって、農業に対する国民の関心と期待の
高さがうかがえた。

 農牧展の開会式には、大統領が出席するのが恒例であり、今年5月に就任したキ
ルチネル大統領による公式演説が注目されたが、経済・社会問題が山積している中
、昨年に引き続き大統領は開会式には出席しなかった。現地報道によると、キルチ
ネル大統領は、最終日の8月5日に農牧展を訪問したが「農業部門に伝えるべきニ
ュースはなく、農産品に対する輸出税 (本紙通巻第529号を参照)を見直す予定は今
のところない」と表明した。

  今回の農牧展では、大統領の公式演説こそ実現しなかったが、大統領や経済大臣
が訪問したことや、特別ゲストとしてWTOのスパチャイ事務局長を招いたことな
どは、農業部門に対する政府の友好的な姿勢を反映したものと現地報道は伝えてい
る。
 
 
農牧庁長官、農業団体との対話を重視 

  一方、アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)のカンポス長官は8月2日の
開会式において演説した。同氏は、同国の農業部門が経済回復の鍵を握ると強調し
た上で、農産品の輸出を拡大するために、輸出仕向けに限らず、国内仕向けの農産
品も含め、安全性や品質を重視することで、農産品の付加価値を高めることが重要
であるとした。また、SAGPyAは、農産品の輸出増大を図るため、より多くの
中小企業が輸出市場に参入できる体制づくりに着手しており、これは、雇用の創出
や地方経済の活性化につながるとしている。さらに、農業団体との対話を重視する
ことで、お互いに協力して、農業部門の抱える諸問題の解決に当たる姿勢を明らか
にした。

  カンポス長官の演説に対する業界の反応として、明確なメッセージに欠けるとの
不満も聞かれたが、農業団体との協調関係を重視する姿勢は、好意的に受け止めら
れた。


SRA会長、輸出税の引き下げなどを訴える

 アルゼンチンで最も政治的影響力の強い農業団体であるSRAのミゲンス会長は
、開会式の演説の中で、アルゼンチンの輸出競争力を回復させるには、輸出税の税
率の大幅な引き下げが不可欠であるとし、先進国に対し農業補助金の撤廃や削減を
要求しながら、自国の農産品に対して輸出税を課すのは、アルゼンチンの国際的な
発言力を著しく弱めるものであると主張した。

 一方、経済統合に関しては、南米南部共同市場(メルコスル)の基盤を確立させ、
その上で、米州自由貿易地域(FTAA)、対EUなどの国際交渉を行うという政府
の方針を支持するとした。

 また、地域経済の活性化を図るために、パタゴニア地域の羊肉や羊毛生産などに
対し、さらなる政府支援が必要であると訴えた。

  さらに、畜産部門に対する提言として、牛肉の輸出拡大のために、同国の生産シ
ステムに適合した、牛の個体識別制度やトレーサビリティーの確立を図ること、ま
た、乳製品の輸出競争力を高めるために、中長期的な視野に立った戦略的な乳業政
策を策定する必要性があることなどを訴えた。
 
【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 8月15日発】 


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