ALIC/WEEKLY


2003年の10大ニュース


シンガポール駐在員事務所【 斎藤 孝宏、木田 秀一郎 】

1.ASEAN首脳会議開催される

 10月7〜8日にかけてインドネシアのバリ島で東南アジア諸国連合(ASEAN)
首脳会議が開催された。今回は日本、韓国、中国およびインドが招待され、経済協
定早期実現に向けての枠組み合意がなされた。日本はASEANとの包括的経済枠
組み文書に署名しており、さらなる積極的関与が要望される一方、ASEAN対中
国では昨年の協定署名時に整っていなかったアーリーハーベスト(関税の撤廃を前
倒しする措置)関連産品の取り扱い等の協議内容について修正プロトコルが署名さ
れるなど、当地域における農産物の取り扱いについて今後の流れを方向付ける節目
となった。


2.第8次マレーシアプランの進捗状況(マレーシア)

 10月末、マハティール首相の退陣に併せ、第8次マレーシアプラン(2000〜2005
年)の中間評価が行われた。農業分野では別途策定されている国家農業計画(第3
次:1998〜2010年)に基づき当プランとの整合を図りながら、自給率の向上と近代
化を達成し、将来的に輸出産業への発展を目標に、畜産振興に関しては大規模複合
経営を推進することとされている。しかし一方で、零細経営についても今年5月に
発表された景気対策の一環として政府系銀行による小口短期融資制度による支援を
図るなどとされた。



3.「食品安全年」に向けた取り組みが活発化(タイ)

 タイ政府は2004年を「食品安全年」とし、食品衛生環境の改善や食品検査の強化
など各種キャンペーンを展開している。政府閣議で6月17日に輸出入食品や農産物
の品質検査を行う機関の設立が承認されたほか、飼料製造工場に厳密な衛生基準を
求めることなどが挙げられた。一方、同国食品会社大手CPFグループは食品の安
全性を前面に打ち出した加工品工場の建設を相次いで発表するなど、「食品の安全
性」というキーワードの下、官民を挙げて取り組みが活発化している。



4.中央ジャワでニューカッスル被害(インドネシア)

 インドネシアでは8月初旬以降中央ジャワ州および西ジャワ州を含む近隣地域で
強病原性のアジア型ニューカッスル病が主要因である被害が中小規模養鶏農場を中
心に拡がった。当国では例年10月頃から始まる断食月に、食肉の需要期を迎えるも
のの、今年はこの騒ぎの影響で需要が停滞し、業界からは不安の声が上がった。こ
れに対し、同国政府は病性鑑定を急ぐと同時にまん延防止のための措置を講じた。



5.養豚地域化計画を本格的に推進(マレーシア)

 マレーシア農業省は2月18日、国の進める集中養豚地域化計画の一環として、ふ
ん尿や排水による環境汚染や禁止薬剤の使用、残留などによる健康被害を引き起こ
す養豚農家を今年12月末日までに閉鎖すると発表した。これに伴い、2006年末まで
に現在の養豚場はすべて閉鎖され、集中養豚地域に移されることになるが、移転に
関わる低利融資や補償などの詳細は発表されておらず、生産者団体は対応に苦慮し
ている。



6.べトナム政府、ビナミルク社の民営化を承認(ベトナム)

 ベトナムの牛乳・乳製品の市場シェアの70〜75%(推定)を占めるビナミルク社
は今年初め、政府から民営化を承認され、10月には一般投資家に対し株式の公開を
開始した。ベトナムは、86年に始まったドイモイ(刷新)政策により市場経済を取
り入れたが、この時、形式的に公社化された国営企業・農場は、国際機関の勧告に
もかかわらず民営化が進んでおらず、同国にとって大きな懸案となっている。ビナ
ミルク社の民営化は、同国にとって最大の事例になるが、酪農開発を最重要課題の
一つとする同国にとっては、ビナミルク社による生乳の全量買い上げ保証が生産拡
大の背景となっており、民営化後も同社がこれを維持できるかどうかが今後の注目
点となる。


7.国際約束を上回る脱脂粉乳の関税割当枠を承認(タイ)

 タイ農業協同組合省の諮問機関である畜産政策・開発委員会は6月、UR農業協
定におけるタイの約束数量を25%程度上回る67,290トンの脱脂粉乳の関税割当枠を
承認した。さらに、同委員会は、国内乳業の競争力強化のためとして同省が求めて
いた、現行20%の枠内関税率の5%への大幅な引き下げについても承認した。生乳
の9割以上を学校給食用に仕向けているため学校の休暇期間は恒常的な余乳問題を
抱える同国では、酪農家との調整のため、割当枠の使用期限の設定など微妙な対応
を迫られた。


8.豚肉価格低迷で輸入肉への批判高まる(フィリピン)

 フィリピンでは今年初め、昨年10月以降豚肉価格が低迷した原因は、急増する輸
入豚肉や不正輸入肉のダンピングと水牛肉の輸入による需要の減少にあるとして、
政府に対策を求める動きが起こった。豚肉価格は、最需要期のクリスマス前にも回
復せず、生産者は危機感を募らせた。輸入豚肉の大半を使用している加工業協会は
防戦に躍起となるなど混乱し、この騒ぎはその後しばらく議論の的となった。



9.官民あげての「食品安全の日」を開催(シンガポール)

 シンガポール農産食品・獣医庁(AVA)は今年7月18日から20日までの4日間
にわたり、ショッピング・モールの一部を会場に「食品安全の日」の博覧会を開催
した。今回のキャンペーンは、97年の豚ウイルス性脳症やSARSの発生により、
食品の衛生上の安全性に対する関心が高まっていることを反映したものである。同
国は、清潔な国というイメージがあるが、市場や食堂街の裏側を見ると必ずしも衛
生的とはいえず、政府は市場の移設・再構築を示唆するなど管理を強化する意向を
示している。


10.2003年水産・畜産フェア開催(ミャンマー)

 10月31日〜11月4日の5日間の日程で、首都ヤンゴンの貿易センターにおいて第
2回ミャンマー水産・畜産フェアが開催された。同フェアは同国商務省のフェア開
催委員会と畜水省との共催で今年2月に開催される予定であったが、同月に金融機
関への信用不安により暴動の危険性が高まったため、無期限で延期されていた。こ
のフェアでは海外投資家へビジネスチャンスを提供し、水産・畜産業の振興に資す
ること等を目的とし、輸出に占める割合の高い水産業に比較的焦点の当てられた催
しとなった。



元のページに戻る