ALIC/WEEKLY


豪州食肉業界、新たな農場段階の品質保証制度に向け前進


新たな農場段階の品質保証制度を検討

  豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は6月5日、新たな「農場段階の品質保証」
(Livestock Production Assurance:LPA)制度における主な認定のための基
準が食肉・家畜業界(牛・羊)団体間で合意されたと発表した。
 
  現在の農場段階の主な品質保証制度としては、農場における牛の健康管理に主眼
を置いたキャトルケア制度(羊の場合、フロックケア制度)と、肉牛出荷の際に飼
料給与状況などを生産者自らが証明する全国出荷者証明書(NVD)がある。実施
状況については、前者が2割程度であるのに対して、後者はその添付がないと家畜
の売買が不利になるため9割となっているが、昨年、業界が実施した調査では、

@現行のキャトルケア制度は、何らかの改善が必要であり、業界全体にとってより
  魅力的な品質保証制度が必要

ANVDは、生産者が安全性を保証する仕組みであり、食肉処理加工部門からの認
  知度が極めて高いため、新たな農場段階の品質保証プログラムの基盤になり得る
  
−と認識されていた。



検討委員会が組織化

  この制度の開発に当たってLPA検討委員会が組織された。LPA検討委員会は
、生産者、生体家畜輸出業者、食肉処理加工業者、家畜市場、家畜の販売業者、フ
ィードロット業者、小売業者など、行政機関である州・連邦政府を含め、すべての
食肉関係者からの代表で構成される。

  LPA検討委員会のフォスター議長は、この制度について「豪州の食肉製品の国
際評価をさらに高める新たな方法であり、内外の消費者に対して品質保証を提供す
るために、業界における既存の各般の制度をさらに強化するもの」としている。



新制度は2段階の保証手段

  LPA制度においては、「レベル1」と「レベル2」の2段階の品質保証を行い
、既存制度との関連を持つとされている。
  
  今回合意された基準は、LPAレベル1認定のためのもので、認定を得るために
は生産者は@NVDを実施し、A家畜や飼料穀物、牧草の処置状況(獣医治療や給
与飼料)などについて記録を保持し、Bランダムな監査を受けること−が要求され
る。従って、レベル1は、多くの生産者が既にNVDで提供している情報を正確に
裏付けることに主眼を置いたものと言える。なお、加入促進の見地からとみられる
が、すべての生産者は正式な認定を得る前に、制度に単に登録することによって仮
の認定を得ることが可能である。

  LPAレベル2の認定基準はまだ合意されていないが、特定の顧客の要求を満た
すため、飼養環境の管理をはじめ、動物福祉への配慮、打ち身やケガの防止のよう
な特定の要素が考慮され、キャトルケア制度のような既存の品質保証プログラムを
ベースにする見込みである。従って、現在のキャトルケア制度の参加者はレベル2
の認定を受けることが可能とみられる。



新制度実施は来年の早い時期に 

  LPA制度は、農場段階の品質保証に対するより包括的かつ汎用性の高い取り組
みとして、開発の最終段階に入っている。
 
  豪州では食肉生産に関する各種の品質保証制度が任意ながらあるが、特に農場段
階の制度について、いわば実態を勘案した現実的な改善を行うのが新制度の骨子と
言える。大部分の生産者が実施し、家畜のトレーサビリティーを補完する要素も持
つNVDをレベル1の構成の基礎に置いたところは、今日的な流通サイドからの潜
在的な要求を満足させる意図がうかがえる。

 なお、LPA制度の実施については、記録保持の仕組みや資金供給の合意、その
他の詳細が完成した後、来年の早い時期になると見込まれている。



【シドニー 粂川 俊一 6月26日発】   

 
 

元のページに戻る