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O157に要した経費、過去10年間で約27億ドル(米)


牛肉需要の減退による損失額は10年間で約15億8千万ドルに 

  米国の食肉業界誌である「ミート・アンド・ポルトリー」3月号において、
腸管出血性大腸菌O157による食中毒発生の食肉需要、価格への影響や製品の自
主回収などによって食肉パッカーが被った額などについて、過去10年間のコス
トを積算している。概要は次の通りである。
  
  93年に発生した食中毒(3人が死亡、数百人が発症)などを契機に腸管出血
性大腸菌O157(米農務省は、これを「ハンバーガー病」と呼んだ)は、牛肉需
要に多大な損害を与えてきており、特に腸管出血性大腸菌O157の検出や食中毒
の発生により食肉パッカーが行う製品の自主回収は、牛肉需要減退の要因の1
つとなっている。例えば93年の自主回収では牛肉需要が1.6%減少したとし、
93年から2002年の10年間での損失総額は約15億8千万ドル(約1,869億円、1
ドル=118円)に達したとしている。また、シカゴマーカンタイル取引所の90
CL(赤身率90%)ボンレスビーフ価格の動向を見ると、94年から2000年にか
けて腸管出血性大腸菌O157を要因とする製品の自主回収に関連して、自主回収
発表後の5日間に取引価格は2〜2.5%下落したとしている。このことなどか
ら1回の自主回収が平均約330万ドル(約3億8,940万円)の売上減につながり
、94年から2002年で約1億7,200万ドル(約202億9,600万円)の損失が発生し
たとしている。



食肉パッカー、設備投資などに7億5千万ドルを支出

  食肉パッカーは、牛ひき肉への腸管出血性大腸菌O157汚染を軽減するために
多大な投資を行い、この10年間でその額が約7億5千万ドル( 約885億円)に
達したとしている。これには、設備機械の導入に係る経費だけでなく衛生管理
徹底のための人員増による経費(操業コスト)なども含まれている。なお、売
上高上位 10社の設備投資額は約4億ドル(約472億円)、同10社の操業コスト
の増額が約2億5千万ドル(約295億円)などとしており、このうち、エクセル
社は、過去10年間で食品の安全対策に総額約1億ドル(約118億円)以上を支出
、スイフト社(旧コナグラ社)にあっても同様に、約4,900万ドル(約57億8,2
00万円)を支出したとしている。このことなどから、93年には1頭当たりの平
均と畜解体コストは32ドル(3,776円)であったが、最近では46ドル(5,428円
)と約44%も増加したとしている。
 
  また、94年から2002年までに食肉パッカーが行った牛ひき肉の自主回収によ
る損失額が直接経費(牛ひき肉代)で約5千万ドル(約59億円)、その他の損
失も加えると約1億ドル(約118億円)に達するとしている。

  なお、米農務省食品安全局(USDA/FSIS)によれば、上記期間の牛ひ
き肉の自主回収は104件となり、約5,850万ポンド(約2万6,535トン)の牛ひ
き肉が回収の対象となっている。

 

政府機関などは食品の安全性に関する調査に約6,500万ドルを支出

  米農務省農業研究局(USDA/ARS)は、過去10年間(会計年度)で食品
の安全性に関する調査に約4,900万ドル(約57億8,200万円)を支出したとし、
93年には約66万ドル(約7億8,000万円)だったものが、2002年には約1,280
万ドル(約15億1,040万円)までに増加したとしている。また、全国肉牛生産
者・牛肉協会(NCBA)も牛肉のチェックオフ制度資金を利用し、腸管出血
性大腸菌 O157に関する調査費として、過去10年間で約1,600万ドル(18億8,8
00万円)を支出したとしている。

【ワシントン駐在員 道免 昭仁 3月13日発】

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