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EU委、2002/03年度生乳供給量を公表


課徴金の総額は約3億2千万ユーロ
  EU委員会は10月23日、2002/03年度(2002年4月〜2003年3月)のEU加盟15カ
国の生乳供給量の速報値を公表した。これによると、生乳生産割当枠(クオータ)に対
する生乳供給量は、89万4,111トン超過し、これに伴う課徴金が3億1,854万ユーロ(
約401億4千万円:1ユーロ=126円)になった。

 EUの生乳生産は、84年から加盟各国別にクオータを定め、これを超過した分につ
いてペナルティーとして生乳指標価格の 115%の課徴金を課す制度となっている。こ
の制度は、EUでの生乳市場の需要と供給のバランスを保つことを目的として導入さ
れた。当初は、5年計画でスタートしたが、その後数回延長され、アジェンダ2000に
基づく共通農業政策(CAP)改革で、2008年まで延長することとなった。さらに、
本年6月に合意したCAP改革では、本制度は2014年まで継続することとなった。


  
出荷クオータでは、9カ国が超過

  今回発表があった生乳供給量は、クオータ制度が規定されているEC規則 3950/92
を補完する 1392/2001において、毎年9月1日までに、課徴金計算に必要な項目をE
U委員会に提出することとなっているものを取りまとめたものである。

 これによると、農家が乳業者へ出荷する「出荷クオータ」では、EU全体のクオー
タ1億1,774万トンに対し、生乳供給量は1億1,822万トンと約48万トン超過した。こ
れをクオータの超過国だけで見ると、9カ国で85万3千トン、課徴金は3億389万4
千ユーロ(約382億9千万円)となった。これは前年を約7万8千トン上回った。

  最も多い超過となった国は、イタリアで、前年度を約23万トン上回る61万8千トン
、課徴金2億2千万ユーロ(約277億4千万円)とEUの超過全体の72.5%を占めた。
イタリアは、クオータをここ10年で9回超過した常連国となっている。

  イタリアに次ぐ超過は、オーストリアで9万9千トン、課徴金3万5千ユーロ(約
44億6千万円)、フィンランドで3万3千トン、課徴金1千2百万ユーロ(約14億7
千万円)と続いている。

  昨年度イタリアに次ぐ超過量であったドイツは、経産牛頭数減少による生乳生産量
の減少により、本年度は超過に至らなかった。ドイツのほかに出荷クオータを超過し
なかった国は、ギリシャ、スペイン、アイルランド、スウェーデン、イギリスであっ
た。

 農家が直接消費向けに販売する「直接クオータ」は、EU全体では、クオータを生
乳供給量が上回らなかったが、国別に見ると、イタリアとオランダの2カ国が上回っ
た。イタリアは、3万9千トン超過の課徴金1,382万ユーロ(17億4千万円)、オラ
ンダは、2,339トン超過の課徴金83万ユーロ(約1億円)であった。

  なお、課徴金は1トン超過につき、356.27ユーロ(約4万5千円)である。

 

   


1農家当たりの生産量が増加

 EU全体のクオータは、1億1,600万トン(99/2000年度)から、4年間で1億1,700
万トンと増加した。この期間では、EU全体での酪農家数は、70万3千戸から56万戸
と減少しているが、1農家当たりの年間生乳生産量は164トンから210トンと増加し、
全体の供給量も増加している。これは改良や飼養管理技術の向上などにより1頭当た
りの乳量が増加したことによるものと考えられる。

【ブリュッセル駐在員 山ア 良人 10月29日発】

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