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ハイテク獣医公衆衛生センター開設(シンガポール)


新たな食品検査所を開設

  シンガポールは狭い国土の中に400万以上の人口を有しているため、巨大な食料品の消費市場を抱え
ている。しかし、食料供給に関しては周辺国からの輸入に頼らざるを得ない状況にある。そのため、
消費者保護の観点から輸入食品の安全性に関する厳密な検査を恒常的に維持する必要がある。同国食
品獣医局(AVA)は島北西部の軍演習地の隣を併走するリムチューカンロード沿いの農業技術団地に総工
費3,200万シンガポールドル(20億8千万円:1シンガポールドル=65円)の新たな食品検査所を建設
し、7月9日から業務を開始した。

  同国では毎年7月前後に食中毒の予防など、食品安全に関する普及啓もうを目的とした各種催しを、
国を挙げて行っており、同センターの開設もこれにこの時期をに合わせて公表された。

  また関連して、このセンターを会場として、AVA主催により食品生産者等を招待した食品安全セミナ
ーが8月2日に開催された。ここではAVA担当者による食品衛生全般に関する基調講演や、鳥インフル
エンザに関する概括的な説明がなされたほか、関連企業によるプレゼンテーション、出席者に各検査
室の一般公開がなされた。なお、出席者の構成割合を勘案して説明は英語による概要説明のほか、多
くは中国語によってなされた。

  このセンターでは食品に含まれる細菌検査や抗生物質残留検査、重金属汚染や成分分析によるラベ
ル表示の適否に関する検査など8つの検査室で多岐にわたる検査を行い、将来的には周辺国からの分
析・検査依頼にも対応したいとしている。



食料供給のほとんどは輸入依存

  同国の農業生産はわずかで、食料自給率は1割程度であるが、政府の主導により島内の6カ所に総
面積1,465ヘクタールの農業生産団地を設け、積極的に外資を誘致しつつ鶏卵生産や酪農をはじめとす
る畜産や食用魚の養殖、観賞用植物(蘭など)の栽培などを行っている。2003年現在の同国政府の承
認を受けた農場数は268戸、政府との20年間の賃貸契約による用地割当実績は815ヘクタールとなって
いる。農水産業総生産額1億8,600万シンポールドル(121億円)のうち畜産は4,600万シンガポールド
ル(30億円)となっている。

  同国の食肉生産については、80年代中頃、環境問題から本島における養豚が全面禁止された。現在、
インドネシア領の近隣の離島にインド・シンガポール・豪州のジョイントベンチャーによる養豚が行
われており、生体で1日2,000頭程度輸入される他、主に豪州、中国、ブラジル、欧州などから豚肉を
輸入している。AVA発表による2003年の豚肉輸入量は約8万3千トンとされている。ただし、直近の貿
易統計(2003年版)ではインドネシアからの生体豚としての輸入は計上されておらず、政府発表から
正確な需給状況を検証することは困難となっている。またニパウイルスの発生などの理由で、マレー
シアからの生体豚輸入は99年以降停止している。

  ブロイラーについても養豚同様本島での飼養は禁止されており、生体による輸入はほとんどがマレ
ーシア産で約4千3百万羽(2003年)、冷凍鶏肉はブラジル、中国、タイなどを中心に約9万5千ト
ン(同年)を輸入している。

  鶏卵生産では、需要の3割を満たす採卵鶏農場が国内で数件操業しているほか、その他の鶏卵はほ
とんどがマレーシアから輸入されていた。生産用初生ひなは従来主にマレーシア、タイから輸入して
いたが、鳥インフルエンザの発生以降はほとんどがマレーシア産だった。採卵鶏の廃鶏は加工品とし
て主にマレーシアへ輸出されている。



◎マレーシア北部で高病原性鳥インフルエンザの発生確認と発表

 AVAは8月3日、マレーシア北部ペラ州のアヒル農場由来の輸入品より低病原性鳥インフルエンザ
(血清亜型H5)の疑いがある検査結果を得たため、当該農場のアヒルに限定して輸入停止措置を取っ
ていたが、8月18日、マレーシア獣医局より、北部国境ケランタン州の家きん農家で高病原性タイプ
(同H5型)の鳥インフルエンザが発生確認された旨の報告を受け、同日付でマレーシア全土からの家
きんおよび家きん製品の輸入を停止した。前述のように、同国の家きん製品が現在極端にマレーシア
からの輸入に依存している状況を受けて、AVAは報道発表の中で至急代替輸入先を手配するとした。







【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 平成16年8月18日発】 

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