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EUの農相理事会、羊およびヤギの個体識別規則を承認


羊およびヤギの個体単位での出生、移動の迅速な確認が可能
 EUの農相理事会は2003年12月17日、家畜の疾病の拡大を予防する対策の一環
として、羊およびヤギの個体識別システムに関する規則を承認した。

  現在EUでは、1億7,500万頭の羊およびヤギが飼養され、年間7千万頭の子
羊がと畜されている。これらの羊は、農場を単位とした情報を持つ耳標や入れ墨
により管理されており、個々の羊の移動を迅速に確認することが大変難しい状況
である。しかし、今回承認された規則の実施により、EU域内の羊およびヤギの
個体単位の出生地、移動記録などの確認を迅速に実施することが可能となる。

  なお、欧州委員会は、この規則に関する規則案を2002年12月18日に提案してい
た。
 
  今回の農相理事会での承認を受けてバーン委員(保健・消費者保護担当)は、
「2002年1月の口蹄疫危機が、伝染病の拡大を防ぐにはこのような(家畜の移動
の迅速な確認が可能な)システムが機能することの重要性を教えてくれた。この
規則の実施により、羊およびヤギの個体識別を迅速に実施できることとなるが、
農家の負担にならないよう注意を払っている」とコメントしている。

  今回承認となった規則の概要は以下の通り。

・耳標による個体識別は、2005年7月9日から実施することとなり、この日以降
  に生まれたものおよびEU域内を流通するものが対象となる。

・羊およびヤギには、両耳にコードが付された耳標を装着する。ただし、電子個
  体識別、入れ墨などを耳標の一方に代用しても良い。
  
・耳標等の装着時期は、加盟国が定める。ただし、加盟各国は、広大な土地の放
  牧場で飼育された子羊への耳標等の装着については、その子羊がその農場内で
  飼育されている場合に限り装着時期を延期しても良い。しかし、その農場から
  移動する場合は、個体の認識ができる状態にしなければならない。
  
・羊およびヤギが生まれた場合、所管官庁が定める移動証明書(Movement document)
  に、個々の出生情報、移動情報などを付加していくこととなる。

・2005年7月9日までに、加盟国の所管官庁は、コンピューター化されたデータ
  ベースを設置する。
  
なお、この規則は、2004年1月9日付けの官報に掲載された。



2008年から電子個体識別を実施 
 また、この規則では、2008年1月1日から、羊およびヤギでの電子個体識別を義
務付けることも定めている。ただし、羊およびヤギの飼養頭数が60万頭以下、また
はヤギの飼養頭数が16万頭以下の加盟国のうちで自国内のみで流通する加盟国にあ
っては任意となる。また、適用日については、2006年6月30日までに欧州委員会に
より発表される電子個体識別の実施結果のレポートを踏まえ再検討されることとな
る。



◎ 欧州委、2年連続で豚肉のAPSを発動
 
 欧州委員会は2003年12月19日、最近の豚肉の市場価格が下落しているため、昨年
に引き続き豚肉の民間在庫に対する補助(APS)の発動を決めた。この制度は、E
U15カ国の豚枝肉卸売価格が規則に定められた基本価格の103%を下回り、この低
い価格水準が継続すると見込まれる場合に適用される。この対策では、一定期間豚
肉を民間在庫として隔離することにより、需給改善を図るため、豚肉取引業者に対
して助成金が支払われる。今回は2003年12月22日からの在庫分に対して適用され、
単価、一契約当たりの最小数量は昨年と同じである(畜産の情報海外編2003年2月
号トピックス参照)。

【ブリュッセル駐在員 山ア 良人 平成16年1月9日発】

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