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アルゼンチンにおけるGM大豆の特許料支払い問題


カンポス長官、ジョハンズ米国農務長官と会談 

  3月31日アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)が発表したプレスリリースによれば、同日コロンビア
のカルタヘナにおいて、カンポスSAGPyA長官はジョハンズ米国農務長官と、遺伝子組み換え(GM)大豆
に係る特許料の支払いに関して会談を持った。

  最近アルゼンチン政府と農業団体は、モンサント社とラウンドアップ・レディ大豆(RR大豆)の特許料支払
いについて協議を重ねてきていたが、徴収方法が問題であるとか、提示された額が高い(現地報道では、1トン
当たり3.5〜4ドル)などの理由により反発し、交渉が進んでいなかった。アルゼンチンで栽培される大豆のうち
8〜9割がGM大豆で、その多くが自家増殖種子により栽培されているといわれている。

  これに対し業を煮やしたモンサント社は、特許料を支払わない大豆を積んでいる船を輸入港において差し押さ
えるとした文書を輸出業者に送付し、政府などとの間でさらにあつれきを生んでいた。

  このような中、カンポス長官はジョハンズ長官と会談を持ったところであるが、ジョハンズ長官は、特許料を
支払っていないアルゼンチン生産者と競争しなければならない米国の生産者のため、適切な特許料の支払いがな
いことを懸念するとともに、会社が持っている知的所有権を守るためにも、モンサント社の姿勢に賛成する意思
を表明した。

  これに対しカンポス長官は、どのような組み換え技術を導入した種子でも、特許料の支払いをコントロールす
るメカニズムを向上させるため種子法を改正しているところであり、モンサント社の件は一時的なものであるこ
とを説明するとともに、対EUのWTOパネルにおいて、アルゼンチンは米国と行動を共にし、GM製品は従来
のものと本質的に同じであると主張したことを考えれば、製品となった大豆に対し特許料を賦課するのは矛盾し
ているとして、会談を終了した。



メルコスル関係国と共同で対応策を模索

  また4月1日にはこの件について、カンポス長官の呼びかけにより南米南部農牧審議会(CAS)が同カルタ
ヘナにおいて開催され、種子購入時における特許料の支払いは認められるべきことを確認しつつも、その他特許
料に係るどのような支払いに対しても生産者のため防御していくことを、CASメンバーである各国の農相など
が表明したとSAGPyAは報じた。

  この問題に関しては4月12〜13日にブエノスアイレスで開催が予定されている、CASのバイオテクノロジー
関係の会議で最優先課題として対応策が検討されることとなったが、現地ではパラグアイと一部のブラジルの生
産者はモンサント社との間で、すでに製品に対する特許料支払いで合意していると報じられているため、今後の
展開が注目される。



◎パタゴニアの衛生監視体制、順調に機能していることを強調

  パタゴニア動植物防疫財団(FunBaPa)は3月28日、「防疫体制は目的を達成している」というプレス
リリースを出した。これは、5トンの牛肉をナイロン袋に入れ、衛生監視ラインを超えようとしたトウモロコシ
運搬トラックを摘発したことを報じたもので、この2日後にも744キログラムの骨付き牛肉が摘発されている。

  アルゼンチンの南緯42度以南のパタゴニア地域は、国際獣疫事務局(OIE)から口蹄疫ワクチン不接種清浄
地域として承認されており、ワクチン接種清浄地域となっている同以北からの牛肉などの搬入は禁止されている。
これを監視するのは、アルゼンチン家畜衛生事業団(旧SENASA)などが関与して1992年に設立されたFu
nBaPaであり、理事長はアルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)のアマジャ総裁が就任している。

  実際の監視体制は、“パタゴニア検疫システム(SCP)”と呼ばれ、バランカス川〜コロラド川沿いの道路
に14カ所、ネグロ川沿いに4カ所、南緯42度線に3カ所の監視所が置かれているとともに、10の空港、1つの港
などでも監視体制が敷かれている。

  組織的には、SENASAのほか、南緯42度以南のチュブト州、サンタクルス州、ティエラデフエゴ州および
パタゴニア近郊となるブエノスアイレス州、ラパンパ州、メンドウサ州、リオネグロ州*、ネウケン州*の公的
機関や関係団体・企業の代表者が集まり活動方針を決定しており、また活動資金はそれら州の政府、生産者、企
業、市、SENASAなどが拠出するとともに、自動車の消毒料金などが収入となっている。

*:普通アルゼンチンでは広域的に見て、当該2州もパタゴニアに含まれる。
 




【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 平成17年4月6日発】 



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