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飼料自給率向上対策の現状(インドネシア)


飼料原料の需給動向 

  インドネシアでは、家畜用飼料の9割以上が採卵鶏やブロイラーなどの家きん向けで、養鶏産業における生
産費の6〜7割を飼料費が占めると言われている。
 
 インドネシア飼料生産者協会(GPMT)によると、2003年の飼料生産量は720万トン、2004年の推計生産
量は730万トンとされており、GPMT加盟の大手飼料製造46社は主に南北スマトラ、中央、東西ジャワおよ
び南スラウェシの各州に立地している。

 統計局発表による2003年の飼料原料の輸入量はトウモロコシが約135万トン、うち97%は中国産で、輸入品
ではここ数年中国産トウモロコシへの一極集中が見られる。一方、トウモロコシの国内生産量は1,091万トン
となっている。
 
 なお同年の大豆輸入量は119万トン、うち米国産が94%、大豆粕の輸入量は156万トン、主にブラジル、米国
、インドからの輸入となっている。国内生産大豆は67万トンとなっており、トウモロコシと比べ作付けが少な
いことがうかがえる。



トウモロコシ自給対策の現状と課題

  同国ではここ数年来、養鶏産業における飼料輸入依存による生産費のリスク変動を回避することなどを目的
に、トウモロコシの自給率向上対策を行っており、農業省の掲げる計画によると、2009年には約1,400万トンの
国内生産を達成することで将来的には周辺国への輸出も視野に入れたいとしている。しかし、国内産トウモロ
コシの収穫は、年間の6割が雨期である2、3月に集中しており、乾燥貯蔵施設が普及していないことや輸送
のための道路、積出港などのインフラが整っていないことなどにより、水分を多く含むことによる品質劣化(
アフラトキシンに代表されるカビ毒の発生)や輸送経費増大によるコスト高の問題などがある。

 遺伝改良種子の使用率が周辺国に比べ少ないため、単位面積当たりの生産量が低水準であることも問題で、
タイ(95%)、フィリピン(60%)に比べて同国の遺伝改良種子の利用率は21%程度とされる。

 また生産者にとっては、他の作物と比較して利益率が低いトウモロコシの作付けに対する意欲は希薄で、政
府による生産者保証価格や貿易措置による競争力の強化対策がない限り計画の達成は困難との見方がある。

 なお飼料原料の輸入に当たっては、播種用トウモロコシ、大豆かす、魚粉などで付加価値税10%が課税され
るほかは、現在、基本的に関税率0%となっている。



◎鳥インフルエンザ対策の現状

 昨年10月以降、鳥インフルエンザ(AI)の発生報告が無かった同国では、今年3月中旬から再び発生が報
じられており、主に中央ジャワ州、南スラウェシ州での被害が大きい。農業省発表によると、2003年末以降の
全土での被害はおよそ1,600万羽、うち、半数の800万羽は中央ジャワ州に集中しているとされる。
 
 また、4月には東ジャワ州のスラバヤで豚からH5N1タイプのウイルスが同定され、変異による人への感
染が心配されている。

 今年2月にホーチミンで開催された東南アジア地域AI対策会議では、自国内でのAI対策の現状について
口を閉ざしていた同国であるが、3月にタイのバンコクで開催された民間主催による畜産フェアのシンポジウ
ムでは、農業省畜産総局家畜衛生課長によりその概要が公表された。これによると同国ではブロイラーにワク
チネーションを実施しているとされた。このことに関して、当事務所からのインタビューに対する回答では、
想定されるアジュバント(adjuvant)残留問題対策として「出荷制限などの措置は採っておらず、接種対象羽
数がわずかであるという理由で今後も対策措置を講じる予定はない」とのことであり、消費者の健康保護に対
する意識の低さがうかがえた。また、「家きんへのワクチネーションの実施に際しDIVAシステム(予防接
種動物に対する感染識別方法)に準拠することが重要だが同国の対応いかん」との質問に対し「予算不足など
により(DIVAに準拠しているかどうかの)検証作業がはかどっておらず、今後改善の余地がある」との回
答を得、生産者保護を優先する同国のAI対策実施上の問題点が明らかとなった。





【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 平成17年4月21日発】

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