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第119回国際農牧工業展を開催(アルゼンチン)


来場者数は昨年を下回る 

 アルゼンチン国際農牧工業展(以下「農牧展」という)が7月21日から8月2日まで、首都ブエノスアイレス市
で開催された。アルゼンチン農牧協会(SRA)が主催するこの農牧展は1875年の開催から今年で119回目を数え
る。例年、家畜の品評会、農業機械の展示、セミナー、地域特産品の販売などが行われ、関係者のみならず大勢
の家族連れでにぎわうことから、ブエノスアイレスの冬の風物詩ともいえる。主催者側の発表では今会期中71万
5千人が来場したものの、開催直後の週末が悪天候だったため、昨年の95万人に及ばなかった。
 
 家畜の競売では、ヘレフォード種の種雄牛が過去最高の12万5千ペソ(約475万円:1ペソ=38円)で落札された
ことが大きな話題となった。



輸出税をめぐり様々な論議

 30日に行われた開会式には昨年に引き続き、キルチネル大統領、ラバーニャ経済生産大臣の出席はなく、また、
農牧水産食糧庁(SAGPyA)のカンポス長官も健康上の理由から欠席、シオリ副大統領、SAGPyAのウル
キサ次官らの代理出席となった。大統領ほかの欠席については、直前に決定された乳製品の輸出税引き上げ(本
紙通巻第683号参照)により、業界団体からの直接的な批判を避けたためではと報じられている。

 開会式ではSRAのミーゲンス会長があいさつに立ち、政府関係者の欠席に対し、遺憾の意を表明した。同会
長の発言要旨は以下のとおり。

 ・農牧業は収穫量、生産量、輸出量の記録更新により、経済回復に最も貢献しているが、最も恩恵を受けてい
  ないセクターである。昨年は農産物の輸出税として63億ペソ(約2,394億円)を納付し、これは国家収益の40%
  に当たる。輸出競争力を妨げる輸出税の廃止を今後とも主張していく。

 ・国家畜産計画が挫折した中、一部の州政府の働きにより、地域レベルでの畜産計画が構築されたことを評価
  する一方、全国的な農業政策の不在を批判する。

 一方、ウルキサ次官は演説の中で、「政府は、社会的、経済的安定のために必要な政策を講じる必要があれば
いつでも対応し、さらに過去の行動を見直す準備がある」と発言したことから、輸出税の引き上げの見直しに関
するものと関係者の憶測を呼んだ。しかし、ラバーニャ大臣は、輸出税の引き上げは「すでに決定された」とし、
いかなる変更も行わないことを明言している。



南米南部農牧審議会も同時期に開催

 一方、メルコスル加盟国および準加盟国の農相で構成する南米南部農牧審議会(CAS)が7月28、29日に開催
され、29日の農牧展の開会式には各国農相もそろって参列した。今回の会議では国連食料農業機関(FAO)、米
州農業協力機関(IICA)との国際協力、各国の農業政策などについて討議が行われた。



イスラエルとの農業に関する共同宣言に署名

  農牧展開催中の8月1日、SAGPyAはイスラエルとの農業協力の開発を振興するための共同宣言に署名し
たことを公表した。合意内容は、両国の共通関心事項である、かんがいシステム、バイオ燃料の開発、家畜改良
技術、生乳生産やバイオテクノロジーといった分野における農業調査委員会を立ち上げる可能性について模索・
推進するとしている。なお、署名を行ったサブサイ次官は、協力活動の推進を通じたイスラエルとの関係強化の
重要性を強調し、短期間のうちに農業分野における協力協定が具体化できることを期待していると述べた。さら
にメルコスルとイスラエルの間での自由貿易地域の設置を進めることへの関心を明らかにした。 
 



【ブエノスアイレス駐在員 横打 友恵 平成17年8月3日発】 



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