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豪州、10年ぶりの農業政策見直しへ


  豪州連邦政府のトラス農相は3月1日、キャンベラで開催された豪州農業資源経済局(ABARE)に
よる農業資源観測会議(OUTLOOK2005)の開会あいさつの席で、豪州国内の農業および食品産
業が、今後想定されるさまざまな課題に対処するため、現行の農業政策を10年ぶりに見直すことを発表し
た。



早期の見直しが必要との声も

  トラスの農相は、この中で「農業および食品産業の多くが、この10年の間、著しい成長を遂げており、
これは、他の産業の成長率を上回っている」とし、これまでの農業政策が妥当であったことを強調すると
ともに「連邦政府の農業政策により、国内の農業および食品産業が豪州の発展と福祉に対して引き続き貢
献できることを保証したい」と述べ、農業政策の重要性を訴えた。

  今回の見直しの背景には、現行の農業政策を策定してから10年が経過し、この間、農業および食品部門
は順調な成長を遂げてきたものの、輸出価格の下落、競争と緊密化が混在した世界市場、消費者し好の変
化、さまざまな貿易問題、また、干ばつなどの要因による農産物などの不安定な育成条件など、さまざま
な課題が生じてきている。こうした中、関係者は、これら課題に対応するためにも早期の政策見直しが必
要との考えを示していた。



政府、産業界が一体となった策定が必要

  政策見直しに先立ちトラス農相は、農業者団体、食品業界など農業関係者10名により組織された委員会
に作業を委託し、その委員会で今後の農業政策や計画の方向性について提言がまとめられることとなって
いる。

  作業委員会の委員長に指名された全国農業者連盟(NFF)のコリシュ会長は、トラス農業による政策
見直しの発表に際しNFFがかねてより主張していた農業政策の見直しが実施されることに対して歓迎の
声明を出すとともに、産業界と政府が一体となって長期的戦略を策定し、今後数十年間にわたる農業の将
来性を確固たるものとする必要があると、提言の取りまとめに向けての抱負を語った。



2006年3月までの策定を予定

  連邦政府は同日付けで、政策見直しのたたき台として業界関係者などに対し、「豪州農業および食品部
門の実績評価」と題された資料を配布した。作業グループはこれを基に、広範囲にわたる農業関係者や食
品メーカーの意見を集約し、産業界と密に連携を取りながら今後の政策や各種計画の方向性について策定
することとしている。
  
  最終的な提言は、今年12月14日までに農相に提出され、連邦政府はそれを基に2006年3月までに新たな
農業政策を策定することとしている。なお、これは、来年のOUTLOOK会議で報告される予定である。 

  トラス農相は、今後の重要課題として、動物福祉への対応、遺伝子組み換え(GM)農産物、バイオセ
キュリティの脅威、農村地域での労働力減少問題、農地価格、環境保護などを挙げている。



◎豪州乳業会社の買収劇、長期戦の様相

  豪州大手乳業会社のナショナルフーズ(NF)をめぐる買収劇は、長期戦の様相を呈してきた。ニュー
ジーランドの大手乳業会社フォンテラは、昨年10月末にNFに対し、発行済み株式の公開買い付けによる
買収を提案していたが、これに対しフィリピンの大手飲料会社であるサンミゲル社も、フォンテラ社に対
抗して同社を上回る価格での買い取りを提案し、NF側もこれを支持していた。しかし、今月2日、フォ
ンテラ側が買取価格を引き上げたことからNFもフォンテラ支持へと態度を変化させ、慌てたサンミゲル
側は、フォンテラ社の情報開示に不備があるとの訴えを今月7日、買収委員会に提出している。サンミゲ
ル側は近く買取額を引き上げると見られており、豪州乳業会社をめぐる買収劇は混迷を極めている。




【シドニー駐在員 横田 徹 平成17年3月10日発】 
 
  

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