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欧州委、IPPC指令の実施状況に関する報告書を発表 欧州委員会は11月3日、産業や農業の幅広い分野での汚染廃棄物を総括的に防止、管理する統合汚染 防止管理指令(IPPC(Integrated Pollution Prevention and Control)指令、96/61/EC)の実施 状況に関する報告書を発表した。同指令は、主な産業施設(工場、エネルギー生産工場、大規模農場な ど)から大気、水、土壌への有害な放出物を制限することを目的として96年に制定されたものである。 今回の報告書では、加盟国での同指令の適用が非常に遅れているとともに、不正確な規則への置き換え があったことが報告されている。また併せて、この遅れを取り戻すため、同指令の実施に関する行動計 画を示している。 IPPC指令の内容 IPPC指令は、金属、鉱物、科学物質、繊維、皮革、加工食品、家きん・豚農場などのような工業、 農業活動の幅広い分野からの汚染について総括的な防止、管理を通じて、高いレベルで環境を保護する ことを目的としている。同指令に基づき各加盟国は、欧州委員会がEU加盟国や関係業界の技術的な情 報交換を基に合意した適用可能な最良の技術(Best Available Techniques :BAT)の参考文書を考 慮し、指令の対象となる施設の操業の認可を行うこととなっている。なお、本規則は、「指令」である ため、認可などの実行権限は加盟国に託されているので、有害物質の放出を防止、管理する具体的な基 準、限界値などは設定されていない。 IPPC指令で加盟国による認可の対象となる畜産関係施設は次のとおり。 ・1日当たり50トンを超える枝肉生産能力を持つと畜場 ・生乳以外の動物性原料を使用して生産する最終製品が1日当たり75トンを超える食品工場 ・1日当たり200トンを超える生乳を処理する生乳加工場 ・1日当たり10トンを超える動物の死体の処分および再利用を行う施設 ・家きんおよび豚を集約的に飼養し、次の飼養頭数を超える施設 A.家きん4万羽 B.30キログラムを超える豚2千頭 C.繁殖豚750頭 ・1日当たり12トンを超える皮革を処理する工場 報告書の内容 今回発表された報告書は、2000〜02年の間の旧加盟15カ国のみを対象としたものであり、同指令に よる対象施設は総計約4万5千件であった。全般的には、同指令の加盟国の規則への置き換えが非常 に遅れており、また、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、オランダ、ルクセンブ ルク、スペインの8カ国では不正確な置き換えがあったことを指摘している。 さらに、同指令では、99年10月30日までに各加盟国の規則に置き換えをすることとなっており、そ れ以降の新規施設または増改築する施設については、条件に従った認可が必要となっている。また、 それ以外の既存の施設については、2007年10月30日までに条件に従った認可をすることとなっている。 しかし、同報告書では、全体の約13%に相当する5,545件の施設しか認可されていないことが報告さ れている。 同指令実施に係る行動計画 欧州委員会は、上記のように、認可の状況が遅れていることを考慮し、IPPC指令実施に関する 行動計画を同報告書内で示している。これには、@不正確な置き換えがあった加盟国を調査し、完全 なものとすること、A2007年10月30日までの完全な実施に向けた加盟国の認可の過程を定期的に監視 する指標を設定すること、BBATの参考文書を2005年末までに完結するとともに、これまでの同文 書の再調査を実施すること、C同指令の実施に関する手引きの作成および指令の見直しなど−を挙げ ている。 ◎欧州委、動物福祉に関する市民の意識調査を開始 欧州委員会は11月8日、EU市民における動物福祉に関する意識レベルを調査するとともに動物福 祉の重要性の位置付けについて評価するため、インターネットを通じた動物福祉に関する意識調査を 開始した。この調査は本年12月11日まで実施し、この結果は、現在同委員会が準備している動物福祉 に関する行動計画とともに発表される予定である。【ブリュッセル駐在員 山ア 良人 平成17年11月9日発】
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