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アルゼンチン、輸出業者に対する税の還付を停止


生活基本食料品全般を対象に税還付を停止

 アルゼンチン経済生産省は11月10日付け決議第616/2005号により、輸出振興を図るために実施していた
輸出業者に対する付加価値税(IVA)を主にした税の還付を、牛肉や牛乳乳製品などの食料品について、
停止することを突如発表した。

 実際に対象となるのは、メルコスル共通関税番号上で200項目に及び、具体的な品目としては、@牛肉
全般(舌、肝臓も含む)、A豚の内臓(肝臓を含む)、B鶏肉(肝臓を含む)、魚(マス、サケ、ヒラメ、
カレイ、マグロ、サバ、ウナギなど)、C牛乳乳製品(牛乳、クリーム、粉乳、ヨーグルト、ホエイ、バ
ター、フレッシュチーズ、プロセスチーズ、)、D卵(ふ化用のものおよびふ化用でないもの、乾燥卵黄)、
E野菜(玉ネギ、ニンニク)、F茶(緑茶、紅茶、マテ)、G米、H小麦の粉・ミール・グルテン、I食
用油(大豆、落花生、ヒマワリ、綿実、トウモロコシ)、J牛肉・鶏肉の調製品、K穀物によるベーカリー
製品−となっている。

 この税還付の停止措置に踏み切った背景には、アルゼンチン政府が推し進める生活基本食料品のインフ
レ抑制策があり、2005年に入り牛肉、鶏肉、乳製品に対して、さまざまな対策を講じてきたが、年末を間
近にして、急きょこの措置となった(なお過去に実施された生活基本食料品に係るインフレ抑制策は、本
誌通巻第691、693号などを参照)。

 今回の実施に当たり経済生産省からのプレスリリースなどはなく、食肉パッカーからは「事前に何の説
明もなく決議の公布となった。農畜産品衛生事業団(SENASA)職員の立ち会いの下、生鮮牛肉の輸
出について、顧客と話を進めてきたが、何も知らされずいきなりの決定のため、われわれは先方に対して
何と説明して良いのか分らない」と新聞記者のインタビューに答えた者もあった。



パッカーへの影響について

  今回の措置に係る影響について、畜産関係者に質問したところ、以下の回答が返ってきた。

・輸出業者の話では、これまで税の還付として輸出額に対し、@EU向け高級牛肉枠(通称:ヒルトン枠)
 で5%、A煮沸などの加工牛肉で5%、B生鮮冷蔵冷凍牛肉で2.9%程度−の還付があった。

・この措置で一番影響を受けたのがSwift社で、輸出品目のほとんどが@とAなので、ほぼ5%の税還付が
 なくなり、また、その他の大手輸出パッカーは、平均4%程度と言われているため、1カ月で約80〜100
 万ペソ(3200〜4000万円:1ペソ=40円)の減収となり、1年間で400万ドル減る試算となる。

・また輸出パッカーは枝肉ベースで、1キログラム当たり4.8ペソ(192円)程度で購入していたが、還付
 がなくなることで試算すると同4.6ペソ(184円)に下げないと購入できない。今までは販売側から「輸
 出業者は還付を受けられるのだから少しは高く買ってくれ」と要望され実施してきたが、今後はそれが
 できなくなるからだ。

 なお輸出パッカーなどの批判に対しラバーニャ経済大臣は、アルゼンチンペソは対ドルレートにおいて
2.9程度で維持し、かつ10月後半ぐらいからはさらに下落して3.0ペソ(120円)前後となっているが、これ
は政府が介入してペソレートを下げているためで、「輸出業者はペソ建てで収益を上げていたはずである」
と話したと報じられている。



◎チリ産牛肉など、米国へ輸出可能に

 11月15日チリ農業省農牧庁(SAG)は、米国がチリ産牛肉・羊肉・豚肉の輸入を許可したことを、米
国農務省食品安全検査局(USDA/FSIS)から通報されたと発表した。

 SAGによれば、「これは両国の衛生当局が約3年間の交渉の末にたどり着いた結果であり、チリ農業
省における市場開放政策の一翼を担うことになる」としている。

 チリと米国は2003年6月に自由貿易協定(FTA)に調印し、2004年1月から実行に移されており、チ
リが輸出する場合、牛肉では関税割当(2004年1,000トン、2005年1,100トン)を、豚肉では無税となって
いたが衛生条件が整わず、FTAをうまく活用できない状況となっていた。

 なお米国側の正式公表は同月21日で、30日後(12月21日)から有効となるため、SAGはその期間に米
国市場の要求を満たすと畜施設の認定手続きを開始し、そのリストをUSDAに提示するとしている。

 また11月18日にはアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席していたチリのラゴス大統領は、中国
の胡錦濤国家主席とFTAに調印した。今後、議会の承認手続きなどを経て発効することになるが、チリ
輸出品の92%、中国輸出品の50%が直ちに無税となり、その他のものは10年以内に無税となる。なお、例
外品目としてチリは1%、中国は3%の品目を設けている。このようにチリの農産物輸出市場は、益々拡
大する傾向にあるようだ。



 
【ブエノスアイレス駐在員 犬塚明伸 平成17年11月22日発】 

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