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対日EPA大筋合意に冷静な反応(タイ)


9月1日EPA大筋合意

 9月1日、日本を訪問中のタクシン首相と小泉総理大臣の間で、タイと日本の経済連携協定(EPA)
の大筋合意がなされた。農業分野に関しては、3月に全分野一括合意の下、最終パッケージに合意され
ていたが、鉄鋼や自動車関連分野での調整が長引いていたため、この時期までずれ込むこととなった。
協定への署名は来年とされており、これまでのところ、タイの畜産関係業界は、この協定の大筋合意に
対して、プレスリリースなどによる公式の意見表明を行っていない。



鶏肉調製品の関税など削減

 今回大筋合意され、タイおよび日本政府の共同プレス発表による協定の畜産分野における日本側の関
税措置などを見ると、鶏肉(骨付きもも肉を除く)は5年で11.9%から8.5%に関税を削減し、鶏肉調
製品も5年で6.0%から3.0%に関税を削減することとなっている。豚肉調製品については、1,200トン
の関税割当と20%の枠内関税削減がなされる。生鮮・冷蔵・冷凍の牛肉および豚肉、牛・豚肉調製品の
大部分、指定乳製品は今回の協定から除外または再協議の対象とされている。



タイ畜産業界の反応は冷静

 これらの措置に対するタイ側の畜産業界の反応を各団体にインタビューした。これまで、同国は、既
に中国やインドなどとの間でアーリーハーベストの実施を行うとともに、豪州とNZとの間ではEPA
が発効している。今回、日本とのEPAが締結されれば、食糧の大輸入国である日本市場へのアクセス
がより容易になることとなるが、各畜産団体の反応は次のとおりで、総じて冷静と言えるものであった。

 ○タイブロイラー加工輸出協会(TBPEA)

  当協会は、鶏肉の関税引き下げに関しては、現時点において、鳥インフルエンザ(AI)の発生によ
 り、輸出は停止されており、影響の程度を測る意味はないとしている。また、鶏肉調製品に関しては、
 5年間で関税が半分になることとなり、それなりの関税引き下げ効果により輸出の増加が想定されるが、
 最初の1〜2年における税率の引き下げ幅はそれほど大きいものとは言えず、その間の輸出への効果は
 限定的であるとしている。

  さらに、協会は、この関税引下げ以上に、日本による工場検査周期の短縮を望んでいる。対日輸出の
 ために工場施設を拡張した場合に、日本の農林水産省の検査を受けることとなっているが、これまで日
 本側が3〜6カ月の周期で対応していることに対し、協会加盟企業の拡張意欲が高いため、もっと頻繁
 な検査周期とすることを望んでいる。

 ○養豚加工輸出協会(SPPEA)

  当協会は、豚肉調製品における品目ごとの関税割当数量など、詳しい内容が不明であるため、現時点
 ではどのような品目で輸出が増加するかなど、具体的に推測することはできないとしているが、豚肉調
 製品に関しても鶏肉調製品と同様に工場拡張の際の日本側の検査が負担となっているとし、検査周期の
 短縮を望んでいる。

 ○養豚協会(SRAT)

  当協会は、今回の大筋合意内容に関して、行政当局からの連絡がないため、協会としてのコメントを
 出す段階にないとしている。


【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏 平成17年9月28日発】



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