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ブッシュ米大統領、貿易障壁の縮小を推進


発展途上国の貧困対策の一環

  ブッシュ米大統領は9月14日、国際連合憲章発効60周年記念を向かえる国連総会特別首脳会合の冒頭
で演説し、ハリケーン「カトリーナ」による被害復興への取り組みに対する国連および加盟国の支援に
感謝するとともに、@テロ対策、A発展途上国の貧困問題、B人類の自由拡大−など国連にとって不可
欠な任務と理想を前進させるための発展と改革の指針を概説した。その中で同大統領は、発展途上国に
おける貧困対策の一環として、世界貿易機関(WTO)ドーハラウンド交渉の締結を通じた自由貿易の
促進を挙げ、米国は、他国が同様の措置を講ずる場合、すべての関税、補助金、およびその他商品やサ
ービスの自由な流通を遮る貿易障壁を撤廃する準備ができていると述べた。

 本指針の中では、発展途上国の貧困および病気への対策として、@腐敗の抑制、教育および健康など
に対する経済的自由の拡充を目的とした改革の促進、A鳥インフルエンザのような国際的な伝染病対策
の実施、B壊滅的な重荷となっている負債の救済、Cドーハラウンド交渉の締結を通じた自由貿易の促
進−が掲げられている。



鳥インフルエンザ対策も改善の必要
 
 同大統領は、発展途上国に対し、他のいかなる国と同様に、自国の商品や能力について世界経済への
アクセスを可能とする必要があるものの、これらの目標を達成するための最大の障害は、21世紀におけ
る偉大な機会から、発展途上国の人々を孤立させている関税、補助金およびその他市場障壁であると強
調した。

 ドーハラウンド交渉は、より大きな目標に向けた重要なステップである。ドーハ開発計画の下、貿易
障壁の撤廃により今後15年間以上にわたり、数億人の人々を貧困から救出することが可能となる。その
ためにも各国は経済の発展を抑制する補助金および貿易障壁を縮小させなければならない。ドーハ開発
計画はこの目標を達成するため最も効果的な方法であり、21世紀における発展途上国の貧困問題を緩和
するためにも、ドーハラウンド交渉は成功裏に終了されなければならないと述べた。

 さらに、同大統領は、鳥インフルエンザなど世界的にまん延し公衆衛生を脅かす伝染病に対し、世界
規模の対策改善の必要があることから、主要国や国際機関を統括するための新たな国際協力体制を公表
した。この協力体制では、伝染病発生に各国がじん速に対応するため、発生国に対して、直ちに情報を
共有することおよび世界保健機構(WHO)へ当該サンプルを提供することなどの透明性を要求してい
る。

 なお、ジョハンズ米国農務長官は同日、同大統領が掲げた本構想を受け、米国の農場および牧場経営
者は、公正な貿易機会を望んでおり、海外諸国に対する同大統領の挑戦を賞賛し支持する声明を公表し
た。



ポートマン代表らも大統領の構想を支持

 このような中、同通商代表部(USTR)ポートマン代表は同14日および15日、訪米中の欧州委員会
マンデルソン委員(通商担当)とWTO交渉の農業分野をめぐり会談した。14日には、同農務長官およ
び同委員会フィッシャー・ボエル委員(農業・農村開発担当)も会談に加わり、EUおよび米国相互間
の問題にとどまらず、ドーハラウンド交渉における現状の課題および来るべき本年末の香港閣僚会議の
ため必要な準備について議論が行われたとしている。

 会談後の共同会見では、同大統領による市場障壁などの撤廃について他国に対しても同等の措置を要
求する発言にも触れられ、ポートマン代表は、今回の会談の中で話し合ったものが大統領の発言した趣
旨の中に完全に含まれていると述べた。一方、マンデルソン委員は、同大統領の意見の精神を支持する
とした上で、ヨーロッパは世界で最も発展途上国に対して市場を開放している地域であるものの、取り
組むべき恒久的な市場障壁と政策が残されているため、今後、多国間交渉を背景としてそれらに対処し
ていく必要があると述べた。



◎米国上院、日本産牛肉の輸入再開延期に関する法案を可決

  米国上院は同20日、日本が米国産牛肉などの貿易を再開すると米大統領が保証しない限り、日本産牛
肉の米国への輸入再開のための予算を執行できないとする農業歳出予算案の修正案を可決した。


【ワシントン駐在員 唐澤 哲也 平成17年9月21日発】


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