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ジャカルタを中心に鳥インフルエンザ被害拡大


鳥インフルエンザ被害状況

 インドネシア保健省は、2005年7月から2006年2月15日までの鳥インフルエンザによる人への感染被害
状況を公表した。確認された患者数は26人、うち死亡者数は18人(平均致死率69%)としている。なおこ
のほかに現在確認中の疑似症例が101、うち死者28人となっている。確認された症例が最多である州は西
ジャワ州(10件、死亡8人)で、以下ジャカルタ特別市、バンテン州、スマトラ島南端のランプン州など
がこれに続き、これらはすべて、同国で人口が密集する首都ジャカルタの周辺となっている。




今後3年間の対策経費を試算

 同国は国際機関や近隣諸国などとの連携により各種対策の実施を表明しているが、財源不足などから現
状では効果的な対策を実施出来ていないとしている。

 同国社会福祉調整相は1月6日に、今後3年間(2006-2008)に必要となる鳥インフルエンザ対策経費の
試算を公表した。
 
 ここでは単年度当たり約2.5兆ルピア(320億円:1,000ルピア=12.8円)、3年間で7.5兆ルピア(960
億円)が必要であるとしている。具体的な項目は家きんおよび人への伝染予防監視や疾病制御のための対
策のほか、技術研修などによる担当者の能力向上対策、公衆への危険性の周知などの10項目としている。
同相は政府からの拠出は6千億ルピア(76億8千万円)が限度であり、援助国からの援助金1億4千万ド
ル(165億2千万円:1ドル=118円)と合わせてもこの試算には及ばないとしてさらなる協力を求めてい
る。ただし、国家開発計画相は、鳥インフルエンザ対策は後年度負担となる融資によるものではなく、援
助国などによる無償譲渡を望むとしている。

 なお農業相は、とうたによる疾病制御が低水準にとどまっていることについて、家きんを飼養する者が
自発的にとうたによる補償金を申請するためには現在の補償金では飼養者は納得しないとし、事実上適切
なとうたによる疾病制御は困難であり、生産者補償を伴わないワクチン接種による疾病制御が大量とうた
の代わりに必要であるとしている。2004年にとうたに対する生産者補償として支払われた額は500億ルピ
ア(6億4千万円)とされる。




アジア開発銀行による技術協力
 
 アジア開発銀行(ADB)は、インドネシア、マレーシア、フィリピンの3カ国に対する伝染性疾病対策
のための技術協力として総額およそ170万ドル(約2億円)のプロジェクトを3月から18カ月間の計画で
開始することとしており、ここではC型肝炎やデング熱などの対策と共に鳥インフルエンザ対策も含むと
されている。ここでは疾病監視と発生時の緊急対応システムの強化を図るとされ、同様の対策が大メコン
経済圏(Greater Mekong Subregion)のうち3カ国(ベトナム、カンボジア、ラオス)の国境各県でも重
点的に行われるとされている。なおこちらの援助額は全体予算の77%である3千万ドル(35億4千万円)
がADBによって拠出される。

 
インドネシア赤十字の試み
 
 インドネシア赤十字は同国政府およびインドネシアデュポン社と共同で1月16日、鳥インフルエンザに
対し危険性の高いジャワ島内の150村で小規模飼養者を対象とした防疫向上対策を行うとした。1年間の
集中対策で経費総額およそ1千億ルピア(12億8千万円)を見込んでおり、赤十字の5万人のボランティ
アにより基本的な防疫知識および技術の普及を図ることで村落単位での防疫体制の確立を目指すとされる。



◎マレーシアで鳥インフルエンザ発生を確認
  
  マレーシアの首都クアラルンプールに程近いスランゴール州の在来鶏からH5N1ウイルス型が同定さ
れたことを受け、大消費地である隣国シンガポールは20日、同州からの家きんの輸入を停止した。現在シ
ンガポ−ル政府が輸入承認する同州の農場はブロイラー5農場、採卵鶏1農場で、ブロイラーは2004年8
月以来輸入実績がないため輸入停止による影響は採卵鶏農場1件分(全輸入の5%)にとどまるとしてい
る。



【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 平成18年2月23日発】



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