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EU、イギリス産牛肉の輸出禁止措置の解除を決定


満場一致で輸出解禁を承認

 フードチェーン・家畜衛生常設委員会は3月8日、イギリス産の生体牛および牛から生産されるすべ
ての製品の輸出禁止措置を解除する欧州委員会の提案を満場一致で承認した。


イギリスに対する輸出禁止措置

 イギリスからの生体牛および牛肉などの輸出禁止は、同国がほかのEU加盟国よりBSE患畜の割合
がはるかに高いとして96年3月に導入された。なお、特定の生体牛については89年より輸出が禁止され
ている。
 
 その後、BSE対策への取り組みの結果として、99年8月より一定の条件を満たす牛肉などの加盟国
および第三国への輸出が認められた。ただし、この条件は、96年8月1日以降に生まれた牛から生産さ
れた牛肉であり、と畜月齢が6カ月齢から30カ月齢で、9カ月齢以上の場合は除骨されていることなど
の非常に厳しい要件を満たすものに限定され、同国からの牛肉などの輸出は制限されたものとなってい
た。

 なお、輸出禁止措置が講じられる前の95年には、同国より約26万6千トンの牛肉(くず肉を除く)が
輸出されており、その約8割がEU域内向けであった。直近の2004年の輸出量は約6千2百トンで、ほ
ぼその全量がEU域内向けとなっている。


輸出解禁の議論開始のための条件をクリア

 欧州委員会が2005年7月に公表した、今後のBSE対策の見直しの方向を示す「TSE指針(Roadmap)」
においては、イギリスからの牛肉などの輸出解禁に関する議論を始める条件として、国際獣疫事務局
(OIE)が定義する中リスク国の条件である「BSE患畜が成牛百万頭につき200頭を下回ること」お
よび「2005年6月のEU食品獣医局(FVO)の検査で好ましい結果を得ること」が必要であるとして
いた。

 このうち、2005年3月には欧州食品安全機関(EFSA)が、同国の成牛百万頭につきBSE患畜は
200頭を下回っていることを確認していた。また、FVOは2005年9月28日、同年6月6〜15日に実施
したイギリスでのBSE対策の調査報告書を発表し、ほとんどの分野で満足のいく経過であると結論付
けていた。


輸出再開の条件

 今回の承認では、生体牛について96年8月1日(肉骨粉の給与禁止措置開始日)以降に生まれたもの、
牛肉などについては2005年6月15日(FVOによる検査終了日)以降に生産されたものが輸出解禁の対
象となっている。

 また、現在の委員会規則では、特定危険部位(SRM)である脊柱の除去月齢について、イギリスは
特例で30カ月齢を超える牛が対象となっているが、これを他の加盟国と同様の24カ月齢超に引き下げる
こととしている。

 今後、この承認内容については、欧州議会による1カ月間の調査の後、欧州委員会による約2週間の
手続きを経て、4月下旬〜5月上旬に規則が採択され、施行される見込みとなっている。

 今回の承認を受け、イギリス環境・食糧・地域開発省(DEFRA)のベケット大臣は「イギリスの
牛肉産業界にとって素晴らしいニュースである。今回のEUの決定はBSE根絶に向けたわれわれの努
力を評価したものである。」とのコメントを発表している。

 また、イングランド全国農業者連合(NFU)は「イギリスの牛肉産業界にとって最も前向きなニュ
ースである。われわれは、牛肉の輸出禁止により失った6億7,500万ポンド(1,377億円、1ポンド=204
円)の市場を取り戻すことができる。今回の決定により国内の競争が進み、利益を求める買い手からの
アクセスにつながるだろう。」とのコメントを発表している。


◎EUでの鳥インフルエンザの発生状況

 欧州委員会は3月6日、ポーランドにおいて、死んだ2羽の白鳥からH5型の高病原性鳥インフルエ
ンザウイルスが確認されたことを発表した。これで、EU加盟国のうち10カ国で、H5N1型の高病原
性鳥インフルエンザの感染が確認または疑われることとなる。
 
 なお、家きんへの高病原性鳥インフルエンザの感染は、3月8日現在、2月24日にフランスのアン県
で確認された1件のみとなっている。




【ブリュッセル駐在員 和田 剛 平成18年3月8日発】

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