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連邦政府、次期予算案を発表、防疫対策などを強化(豪州)


個人所得税減税や年金改革などが目玉

 連邦政府は5月9日、2006/07年度(7〜6月)の連邦予算案を発表した。同年度の実質経済成長率が国
内総生産(GDP)ベースで3.25%との予測の下、歳入は前年度比8.0%増の2,316億豪ドル(20兆3,808億
円:1豪ドル=88円)、歳出は同6.6%増の2,197億豪ドル(19兆3,336億円)と5期連続の黒字予算案とな
った。

  今回の予算案では、好調な国内経済を反映して法人税などの税収増が見込まれる中、4年間で総額367億
豪ドル(3兆2,296億円)からなる個人所得税の減税や年金改革、医療研究、道路や鉄道の整備などが目玉
となっている。


防疫対策や財務相談サービスなどを強化

  農漁林業省関連の予算規模は、全体で約22億豪ドル(1,936億円)となり、予算構成をみると、干ばつに
関連した地方農業対策や技術革新、検疫や輸出対策などが多くを占め、残りは産業振興、国土保全などと
なっている。

  連邦政府は、単年度予算とともに事業実施期間分の総予算額を併せて計上している。畜産関連で新たに
予算化されたものの概要は次のとおり。

○鳥インフルエンザ対策費として3年間で4,420万豪ドル(38億8,960万円)を追加
   鳥インフルエンザ対策として、従来から豪州北部での渡り鳥の監視やサーベイランスなどを実施して
  きたが、今回の予算案では、鳥インフルエンザの侵入を防ぐための空港や港湾での検疫強化や、鳥イン
  フルエンザの疾病研究やワクチン確保、鳥インフルエンザ発生時の生産者の対応訓練などに重点が置か
  れている。

○重大な家畜伝染病や植物病害虫の防疫対策費として4年間で1,600万豪ドル(14億800万円)
   国外から侵入する家畜伝染病対策として、従来は、主に口蹄疫を想定して実施してきたが、貿易の発
  展や旅行者の増加などにより、他の家畜伝染病や植物病害虫の侵入の可能性が増していることから、こ
  れらに備えるため検疫システムなどの改善を行う。併せて、増加する輸入品の防疫上のリスク評価や、
  輸入認定をスムーズに行えるようバイオセキュリティー担当部門を強化する。

○地方の農家などに対する財務相談経費として2年間で972万豪ドル(8億5,536万円)を追加
   干ばつ下やその影響からの回復過程で、地方の農家などに対する財務相談サービスの提供は極めて重
  要であることから、これを拡充、強化する。

○なお、そのほかの農業関連対策として、マレー・ダーリング川流域の水資源の効率的利用対策として5
  億豪ドル(440億円)、不法漁業の取締強化に4年間で9,830万豪ドル(86億5,040万円)などが予算化
 されている。



農業団体は今回の予算を歓迎

  全国農業者連盟(NFF)は、今回の予算案を好意的に受け止めている。
 NFFによると、減税策の一環として、家族経営を行っている農家に対し、事業の譲渡所得税減税を行
うとしていることから、若い後継者が農業を継続しやすくなったとしている。また、道路や鉄道の整備に
より、農産物の輸送が効率的に行えること、さらに、マレー・ダーリング川流域の水資源の効率的利用を
図ることは、農家にとって利益になるだけでなく自然環境にもよい影響を及ぼすとしている。同河川流域
の農業生産高は、豪州全体の35%に達しているが、近年、同河川からのかんがい用水の利用過多などから、
水位が低下し、水不足や塩害などの自然環境破壊が問題となっている。



【シドニー駐在員 井上 敦司 平成18年5月10日発】



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