ALIC/WEEKLY


米通商代表、WTO交渉の成功には今後の4〜6週間が正念場


  ポートマン米通商代表は5月3日、ジョハンズ米農務長官およびシュワブ米通商代表部(USTR)次席
代表とともに、昨年末のWTO香港閣僚会合で新たに定められた本年4月末までの農業分野のモダリティ
(保護削減の基準)の合意などが断念されたことなどを踏まえ、スイスのジュネーブで記者会見を行った。
同代表らは世界経済の発展のために新たな貿易の流れの確立が必要であることを強調するとともに、今後の
4〜6週間が正念場であり、米国のみの力で交渉を成功に導くことは困難であるとした。

 ポートマン通商代表らの発言の概要は以下のとおり。



ポートマン代表は米国のWTO交渉に対する一貫性を強調

  4月30日との期限は果たせなかったが、われわれは交渉をドーハ開発計画を成功裏に終わらせることを保
証する方向を維持させるため、持てる力の限りの努力を行うとの米国の公約を再び申し上げるためにジュネ
ーブに来たのであり、このことは非常に重要であったと思う。

 また、ブッシュ米大統領から次期通商代表候補に指名されたシュワブ同代表部次席代表はWTO関係者の
間では既知であり、彼女の通商代表への就任は議会からの承認を得てはいないが、彼女も今週われわれとと
もにジュネーブにいたことが重要であった。彼女には大統領も多大な信頼を寄せており、米国に失敗をさせ
ない指導力があり、就任の暁には通商代表としての職務を全うするであろう。自分は、通商代表として素晴
らしい経験が出来た。また、クラウダー大使をはじめとする関係者に感謝している。仮に、自分が行政管理
予算局長という新たな職務へ移った場合であっても、貿易支援や農業法のような問題に関する予算および対
策は、ジュネーブでの仕事とも直接関係するため、本件との関係を引き続き持つことになるだろう。私は、
彼女の新たな指導的役割において、彼女を支援し続けたいと思っている、と述べ、WTO交渉が重要な時期
を迎えているにもかかわらず、同代表の交代をブッシュ大統領が公表したことを批判する声が米国内外で出
ていることについて、米国のWTO交渉に対する一貫性を強調した。

 われわれは、ドーハ開発計画をどのように成功に導くかを企てるために、ラミーWTO事務局長、アモリ
ムブラジル貿易外務大臣、中川農林水産大臣などの主要な人物を含め加盟国の4分の3と直接議論した。い
ずれもドーハラウンドにおける野心的な成果を公約していることを確認できた。このことは、皆さんも貿易
交渉委員会(TNC)でのすべての演説を聴かれたのであれば、4月30日との期限を守れなかった直後であ
ることを考え併せると、全員が野心を欲していることに困惑を禁じ得なかったであろう。

 また、今朝アフリカグループや中南米・カリブ諸国(GRULAC)グループをはじめ多くの加盟国が、
私に、彼らの主要な懸念が市場アクセスの拡大であると話したことが気になった。これらの国は市場開放が
経済機会を創造すると考えており、それ故に市場開放を望んでいるのである。例えば、後発開発途上国(L
DC)グループおよびアフリカグループからは、広範な市場開放には反対するのではなく、むしろ彼らは、
市場開放に移行するための管理手法を模索しているとも聞いている。



新たな貿易の流れの確立が重要

  昨年10月の米国提案は、停滞した交渉への活力と提案直後には評価されたが、特に市場アクセスにおいて
これに呼応する建設的な提案がなされなかったため、その活力は消滅してしまった。その後、米国提案は過
大な要求であり現実的ではないとする者もいるが、自分はそうは思わない。米国はほかの同盟国とともに今
次ラウンドにおいて、新たな経済活動の創出、世界経済の成長、途上国の利益のための新たな貿易の流れを
確立する必要があることを主張している。また、この確立なくしてわれわれはドーハの約束を成し遂げるこ
とは出来ない。市場アクセスについて、現時点で各加盟国が示している以上に野心的な結果が得られない限
り、今次ラウンドが成功裏に終了することはあり得ないと言わざるを得ない。

 私は今次ラウンドの成功を、米国が望むものによるのでは無く、新たな貿易の流れの確立によって判断す
るつもりである。



今後の4〜6週間が正念場

 開発のためには、貿易支援、無税無枠、柔軟性が守られることを確実にすることなど多くの局面がある。
それらを実現させるべきであると思う一方、根本的には、利益は、貿易の自由化、市場開放、貿易障壁の撤
廃から生じる。われわれは、その基本的な真理に戻る必要がある。私は、これからの4〜6週間が正念場で
あると考えている。

 今週行われた議論に基づき、ドーハの要求に適合するパッケージを達成し得るものと信ずるが、このため
には、われわれはWTOの加盟国としてすべての作業を共に進めなければならない。米国は引き続き、今次交渉
において指導的立場を努めていくが、仮に大きな経済国であれ、たった一国が成功に導くことは出来ない。
包括的なプロセスであり、ドーハでの約束を満たすとのわれわれの希望を達成するためには、われわれがそ
れぞれの役割を果たさなければならない。


【ワシントン駐在員 唐澤 哲也 平成18年5月17日発】




元のページに戻る