ALIC/WEEKLY
15年ぶりにカルシウム所要量を大幅増加へと改定 豪州連邦政府に属する全国保健医療研究協議会は5月3日、一日の食事の中で国民一人当たりの摂取すべ き栄養素の新しい基準量を発表した。この中で、カルシウムについては、骨や歯を健康に保つために必須の 栄養素であることから、基準量を大幅に増加させた。 新しい基準によると、一日当たりのカルシウム摂取量は、9歳以上の子どもから大人まで1人当たり1,000 〜1,300ミリグラムと、改定前の基準(1991年制定)より約300ミリグラム多くなっている。 一方、実際のカルシウム摂取量については、直近の全国栄養調査によると、子供や女性の半数が改定前の 基準量より少なく、今回の改正の結果、摂取基準量と実際の摂取量の差がさらに広がる結果となり、カルシ ウム摂取の必要性が高まっている。 DA、牛乳乳製品の一層の消費を呼び掛け デーリーオーストラリア(DA)ではこの基準の改定を受け、「コップ一杯の牛乳、ヨーグルト1カップ、 またはチーズ2切れを食べるだけで、簡単に約300ミリグラムのカルシウムを摂取できる」、また、「一般的 に、食事の中で摂取するカルシウム量全体の約50〜60%が牛乳やチーズ、ヨーグルトから取られており、牛乳 乳製品はほかの食品に比べ吸収しやすいカルシウムを多く含んでいる」と述べ、カルシウム不足を補うために、 牛乳乳製品の一層の消費を呼び掛けている。 また、骨粗しょう症団体(Osteoporosis Australia:OA)によると、骨粗しょう症の予防には、カルシウ ムとビタミンDの両方が重要で、多くの人がこれに気付いておらず、さらに、このような骨に関連する病気に ついては、60歳以上の豪州の女性の半数、同男性の3分の1に懸念が持たれているとしている。 OAでは、今回の基準の改定について、「多くの人にカルシウム摂取の重要性を目覚めさせるものとなった」 とし、「毎日十分なカルシウムを摂取することはすべての人、特に子供にとって、極めて重要なことである」 と述べている。 DAは、OAと協力して、毎年骨粗しょう症対策キャンペーン「National Healthy Bones Week」を実施し ている。キャンペーンの内容は、マスメディアを利用したり、セミナーを開催することにより、市民にカルシ ウムを多く含んだ牛乳乳製品の消費を呼びかけ、骨粗しょう症防止を訴える運動となっている。 ※新カルシウム摂取基準量 男女 1〜3歳 500mg/日 〃 4〜8歳 700mg/日 〃 9〜11歳 1,000mg/日 〃 12〜18歳 1,300mg/日 男 19〜70歳 1,000mg/日 〃 71歳以上 1,300mg/日 女 19〜50歳 1,000mg/日 〃 51歳以上 1,300mg/日 なお、日本の一人当たりのカルシウム摂取量は、厚生労働省が行った平成16年度国民栄養調査結果によると 平均で一日600ミリグラムに満たない。また、ほかのDAの行う牛乳乳製品の消費対策活動については、海外 駐在員情報通巻第667号参照。 ◎干ばつの懸念広がる中、ALFA、エタノール義務化に再度反対を表明 先ごろ、ニューサウスウェールズ州では、州の62%の地域が干ばつと認定され、農家に干ばつの影響への懸 念の声が出始めている。このような状況の中、豪州フィードロット協会(ALFA)は、穀物を原料とするエ タノール利用の義務化について反対の主張を強めていくと表明した。ALFAによると、農家は干ばつへの対 処法は向上してきてはいるが、エタノール利用の義務化によって、飼料代の高騰や素牛価格の低下、輸送コス トの上昇を招き、その結果、経営が苦しくなると指摘している。 【シドニー駐在員 井上 敦司 平成18年5月24日発】
元のページに戻る