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生産者団体が環境保全に向けた取組みの推進を表明(NZ)


水質汚染物質の溶脱について、10年間で10%の削減を約束

 生産者団体であるニュージーランド農業者連合(FFNZ)のペダーセン会長は、11月7日の全国総会で、
持続可能な農業を実現するため、今後、農業由来の環境汚染の軽減を図る10 in 10キャンペーンを推進してい
く意向を表明した。このキャンペーンは、河川や地下水などにおける水質悪化による環境汚染に着目し、その
要因の一つとなる肥料や家畜ふん尿といった農業由来の水質汚染物質の溶脱を、今後10年間で10%削減すると
いうものである。今後、行政機関と連携の下、同団体が、傘下の1万7千戸の生産者に対して働きかけていく
こととしている。



環境保全対策の徹底及び適切なモニタリングの実施

 現在、ニュージーランド(NZ)では、環境保全を目的として、行政組織が定めたいくつかの行動計画が実
施されている。このうち農業由来の水質汚染防止対策としては、主に次のような手法がとられている。

 @農業水路や湿地から家畜を隔離し、水質汚染につながる汚染物質の流入を防止。このため、水路付近にお
    けるフェンス、橋、暗きょや植栽などの設置
  A適切な施肥の実施。このため、土壌調査などの結果を踏まえ、作物に適した肥料の選定、施肥に適した場
    所の選定および適量の施肥の実施
  B窒素吸収阻害物質による土壌への窒素溶脱の抑制。NZでは3年前に利用が開始され、着実な効果をあげ
    ている。
    
  同会長は、同団体のネットワークを活用して、生産者に適切な情報提供を行っていくこと。また、専門家と
の連携により、さらに効果的な手法の開発を図ることにより、確実にこのキャンペーンの目標を達成するとし
ている。このほか、行政機関と連携して、進捗状況を記録するためのより適切なモニタリングシステムの確立
を推進していくとしている。

  ただし、このキャンペーンを推進することにより、結果的に農業の生産性低下を招くようなことはないとし
ている。



生産者団体はキャンペーンを評価する一方、目標の削減値には不満の声も

 NZクラーク首相は、この会合の席で、こういった生産者団体の意向を歓迎するとともに、持続可能な農業
に向けて環境改善が図られることを望んでいる。また、NZが持続可能な環境下で農産物を生産すること、す
なわちクリーンで自然環境に恵まれたイメージを維持することは、農産物輸出国として貿易上も意義があり、
官民一体となって推進していく必要があると述べている。また、環境団体は、今回の生産者団体の意向を、環
境保全に向けた重要な第一歩であると評価している。ただし、生産者団体が目標として掲げた削減値について
は、さらに大きな削減が必要であると指摘している。



河川や湖沼などの水質改善は途上

 NZ環境省は11月21日、河川や湖沼などの水質および水の割当てに関する3つのテクニカルレポートを公表
した。これによると、調査対象となった153の湖沼のうち、約半数で水質汚染の影響が見られた。また、特に
低地における水路においては、工場排水などによる汚染は改善されているにもかかわらず、農業などの集約的
な土地利用による水質汚染の比重が拡大していた。従って、引き続き、現在行われている持続可能な水資源の
維持に関する行動計画の適切な実施が必要であるとしている。

  このレポート結果を踏まえ、FFNZでは、今後、10 in 10キャンペーンを推進し、その目標を達成する意
義は大きいとコメントしている。




【シドニー駐在員 井田 俊二 平成18年11月23日発】



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