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キャンペーンの主眼は、消費者の拡大よりも消費頻度の拡大 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、10月22日から豪州国内における新たな牛肉消費拡大キャンペーン を開始した。この最初のキャンペーンは、これから夏場に向けて、“Summer’s here - Bring out the Beef (夏、戸外で牛肉を)”をキャッチフレーズとしており、今後、季節や消費スタイルに合わせてその内容を変 えていくとしている。 豪州では、8割近い家庭が定期的に牛肉を購入するというほど牛肉が食生活に定着している。このため、キ ャンペーンでは、新たな消費者開拓といったものではなく、いかにして牛肉の消費機会を増やしていくかとい うことに主眼を置いている。このキャンペーンは、2010年まで行われることとなっており、この期間中に国内 での牛肉を使った食事の頻度を現行の週平均2.2回から、最終的に週2.6回に引き上げることを目標としている。 また、この期間に、国内の牛肉販売額を3億豪ドル(270億円:1豪ドル=90円)増加させることとしている。 MLAでは、国内の消費者を対象とした主なキャンペーンとして、今回開始したもののほか、2002年から牛 肉およびラム肉といった赤肉を対象としたものおよび99年からラム肉を対象としたものを行っている。 さまざまなメディアを利用した活動、地域特性に対応した働きかけも このキャンペーンは、テレビ、ラジオ、店頭広告、新聞および雑誌といったさまざまなメディアを利用し、 公的な支援を受けて包括的な取り組みが行われることとなっている。 テレビでの宣伝や店頭広告では、牛肉ブランドの確立や牛肉に対する消費者意識を高めることを狙いとして いる。ラジオによる宣伝では、消費者に対して、その日の夕食に牛肉メニューを利用するよう働きかける。新 聞による宣伝では、初めて全国各地にある94の地方紙を利用し、消費者に地域特性を生かした働きかけをして いく。また、牛肉を使った料理のレシピなどを掲載した小冊子を全国の食肉販売店で配布することとしている。 今年1月から引き上げられた肉牛取引課徴金を活用 このキャンペーンは、今年1月に引き上げられた肉牛取引課徴金として集められた資金により行われている。 肉牛生産者、食肉処理加工業者および輸出業者などで構成された牛肉産業資金拠出運営委員会(BIFSC) は、2005年4月、肉牛取引課徴金をそれまでの牛1頭当たり3.5豪ドル(315円)から5.0豪ドル(450円)に引 き上げるべきであるとの勧告を行った。BIFSCはこの中で、豪州牛肉産業は、将来的に海外市場において 米国やブラジル産牛肉との競合が激化する一方、国産牛肉の増産や肉牛・牛肉価格の下落が見込まれる。従っ て、豪州が現在の地位を維持するためには、国内外における消費促進対策の強化が重要であり、そのための資 金積み増しが必要であると主張している。その後、この勧告に基づき、2005年7月に肉牛取引課徴金拠出者に よる投票、同年9月には連邦政府の認可を経て、2006年1月から肉牛取引課徴金が引き上げられた。 肉牛取引課徴金の一部は、農産物残留モニタリング検査や家畜衛生対策費としてMLA以外の組織で運用さ れるが、MLAとして、この肉牛取引課徴金の引き上げにより、年間約2千万豪ドル(18億円)の資金増が見 込まれている。 ◎豪州の干ばつ対策で、5億6千万豪ドルのさらなる追加支援を公表 干ばつの影響が拡大・深刻化する状況下、豪州連邦政府は、10月24日、10月16日に決定した3億5千万豪ド ル(315億円)の追加支援に続き、さらに5億6千万豪ドル(504億円)の追加支援を行うことを公表した。こ の結果、国内の農地の半分以上に当たる44地域(タスマニアおよび北部準州を除く5州)が干ばつ被災認定地 域の対象となるとともに、少なくとも2008年3月までの支援措置の延長、対象要件の緩和および拡充などの措 置が講じられることとなる。今回の追加措置により、2001年より干ばつ対策として豪州連邦政府が支出する支 援額は、総額20億豪ドル(1,800億円)を超えることとなる。 【シドニー駐在員 井田 俊二 平成18年10月26日発】
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