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マレーシア・米国FTAが決裂


時間切れによる交渉打切り

  マレーシアと米国はFTA交渉を進めてきたが、交渉期限である3月末までに合意に達せず、交渉は決裂した。
米国大統領貿易促進権限(TPA)の期限は7月1日までであったが、合意案が米国議会に提出された後、90日間
の審査が必要とされているため、時間切れとなった。合意の障害となったのは、交渉の過程で、マレー人優遇政策
である「ブミプトラ政策」へのマレーシア側のこだわりなどとされている。具体的には、マレーシア政府が工事な
どを発注した場合に、マレーシア企業に落札させるというものであるが、これに対する米国側の了承が得られなか
ったとされている。



FTA推進者は締結の重要性を強調

  マレーシアのハミド外相は、3月30日に、マレーシアは依然として米国とのFTA締結を望んでいるとし、今後
の交渉継続に期待を示した。また、ラフィダ国際貿易産業大臣は、3月中旬での会見で、FTAに反対するのはそ
の内容を正しく理解していないためであるとし、例として、コメの生産者がFTAに反対していることに関連して、
マレーシアは年間消費量の30%に相当する42万トンのコメを主にベトナムから輸入しているが、米国産米は規格が
異なるため輸入量はわずか385トンにすぎないと説明し、政府が責任を持って対応することを強調した。

  また、マレーシア工業連合会(FMM)会長も、米国はマレーシアの最大の輸出相手国であり、同国とのFTA
締結により、関税の低減により米国への輸出が拡大するほかに米国からマレーシア国内への直接投資が増加すると
し、経済を振興して2020年までに先進国の仲間入りをする国家計画(ビジョン2020)にもかなうとした。



FLFAMは対米FTA締結に反対

  一方、農業関係団体の多くは米国とのFTAに警戒感を持っており、中でもマレーシア畜産農家協会連合(FL
FAM)は、米国とのFTA締結に反対してきた。畜産の中でも特に養鶏部門が影響を受けると危ぐしている。
FLFAMによる反対理由は次の通りである。

@生産量に格段の差がある。
     :鶏肉の年間生産量が米国の1,400万トン以上に対してマレーシアが60万トンにすぎない。

A安価な部位が輸出に回される。
     :米国でむね肉が消費され、余剰となったももなどほかの部位が安価に輸出される。

B衛生植物検疫措置(SPS協定)が関税外障壁として機能する。
     :熱帯のマレーシア側が米国の衛生条件を満たすのは容易でない。

Cマレーシアの鶏肉には輸出補助金の適用がなく不利である。
     :米国の鶏肉輸出には輸出奨励計画(EEP)が適用される可能性がある。

D生産コストに大きな差がある。
     :マレーシアは鶏肉生産に要する、種鶏、トウモロコシ、大豆かす、飼養施設、薬品やワクチンなどの多く
       の資材を米国から輸入して使用しておりそれだけでも不利である。

 −などとしている。



【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏 平成19年4月5日発】




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