ALIC/WEEKLY


WHOに対するAI検体の提供再開に合意(インドネシア)


WHOに対するAI検体の提供再開に合意

  インドネシア政府は、3月27〜28日にジャカルタで開催された世界保健機関(WHO)などとの鳥インフ
ルエンザ(AI)の専門家を招集した会議において、WHOに対するAI検体の提供再開に合意した。同国
政府は、WHOに提供したAI検体が商業利用に供され、発展途上国が購入不可能な高価なAI用ワクチン
が製造されていることについて不満を表明しており、今年に入りWHOに対するAI検体の提供を拒否して
いた。

 同国政府は、会議においてAI用ワクチンの平等な供給体制の整備促進を要求し、その理解が得られたと
しており、WHOに対するAI検体の提供を再開するものの、製薬会社がAI用ワクチンの製造を行う場合
には、同国政府の許可が必要とした。

 また、同国政府はWHOのマーガレット・チャン事務局長に対し、発展途上国でも購入可能な低価格のA
I用ワクチン開発を、WHOが製薬会社に働きかけるよう要請した。これに対し同事務局長は、AI用ワク
チンの平等な供給に向けた提案に同意するとともに、製薬会社に対する働きかけを実施するとしている。

 さらに、同国政府はエジプトと共同で行うAI用ワクチンの製造を検討することも表明した。計画の詳細
は公表されていないが、エジプトはワクチンの製造実績があることから、インドネシア政府はその実現に期
待しているとしている。


FAOがAI温床化に対する懸念を表明

 同国では、AIのヒトへの感染拡大を防止するため、今年2月以降、都市部における家きん類の飼養禁止
措置などを実施しているが、その後もヒトへの感染事例が報告されている。WHOによれば、4月10日時点
におけるAIのヒトへの感染事例は、2007年の感染者数が合計28名(うち死亡者13名)となっており、うち
インドネシアは同6名(同5名)となっている。

 このような状況下で、国連食糧農業機関(FAO)は4月2日、AIの発生状況に係る声明を発表し、イ
ンドネシアなど数カ国についてAI抑制が計画通り達成されていないため、新たなAI流行の感染源になる
可能性が強いとの懸念を表明した。

 FAOは、インドネシアのAI発生状況について、ジャワ島、スマトラ島、バリ島および南スラウェシ州
で主に確認されているほか、その他の地域でも散発的に発生しており、同国33州のうちAIの発生が確認さ
れていないのは3州のみであるとしている。サーベイランスについては444地域のうち130地域で実施されて
いるが、さらに広範囲での実施が必要としている。

 また、FAOは同国が1万7千に及ぶ島々で構成されるなどの地理的条件が、AIの抑制に不利であるこ
とは認めているものの、同国の獣医医療体制の弱さとともにAI抑制に係る予算不足や人材確保などの点に
ついて、同国政府の対応にも問題があると指摘している。

 なお、同声明の中ではAI抑制の成功事例として、タイ、ベトナムおよびトルコの事例を紹介している。
これらの国々については、昨年末以降AIの再発が報告されてはいるものの、各国政府によるAI抑制策に
より被害の拡大防止が図られているとしている。


◎AIのヒト感染対策演習を実施

 カンボジアでAIのヒト同士の感染が発生したとの想定で、4月2〜3日に対策演習が実施された。この
演習は「Panstop 2007」と名付けられ、フィリピンのマニラにあるWHO西太平洋地域事務局を本部にして、
アセアン事務局、シンガポールおよび日本の外務省などを結び、発生したAI事例の危険度の認識や当該情
報の連絡、備蓄してあるタミフル剤の輸送手続きなど、ヒト同士の感染を初期段階で食い止めるための訓練
を机上で実施した。アセアン事務局は、本演習がシンガポールに備蓄してあるタミフル剤の輸送に効果を発
揮すると評価しており、また、WHO西太平洋地域事務局は、AIのヒト感染に係る初期段階での封じ込め
演習は初めての試みであり、貴重な経験となったとしている。


【シンガポール駐在員 林 義隆 平成19年4月12日発】



元のページに戻る