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カナダ政府、濃縮乳たんぱくの輸入制限に向け関係国と交渉へ


関税割当の導入による輸入増加の抑制が焦点

  カナダのストロール農務食品相およびエマーソン外務貿易相は2月7日、無税で輸入される濃縮乳たん
ぱく(MPC)の輸入増加を制限するため、ガット第28条に基づく譲許表の修正に向けて利害関係国と交
渉を行っていく考えを明らかにした。具体的には、MPCの輸入関税を引き上げて新たに一定数量の関税
割当枠を設けることを目指すとしている。

  MPCは主にニュージーランド(NZ)やEUから輸入され、乳業者によりチーズなどの乳製品の原料
として使用される。カナダでは生乳の計画生産が行われているため、輸入乳製品が増加すればその分国内
の酪農家が生乳生産量を削減しなければならず、結果的に酪農家の収入減少につながることから、カナダ
酪農家連盟(DFC)はMPCの輸入を制限するよう政府に求めていた。

  なお、ガット第28条は、WTO加盟国が約束内容を修正することを認めているが、国境措置の引き上げ
のためには実質的な利害関係国と代償交渉を行った上で、ほかの産品に関して補償的調整を行うなどの合
意を得ることが条件とされている。



生産者団体は輸入規制の強化に歓迎の意を表明

 これを受け、DFCのラフォージュ会長は、今回の決定は酪農家にとって朗報であるとして歓迎の意を
表明するとともに、計画生産による供給管理の実効性確保のためには輸入の管理が不可欠であり、MPC
の輸入により酪農家が苦境に追い込まれている現状を政府が認識してくれたことを心強く思うと述べた。

  また、MPCに関税割当を導入すべくカナダが関係国に交渉を求めるのはWTO上の正当な権利である
とし、今回の政府の決定を契機に、酪農・乳業界が協調して双方にとって利益となるような長期戦略を構
築できるよう話し合い続けていきたいとした。

  さらに、今回のストロール農務食品相の決定は、政府が生乳の計画生産を支持していることを明確に示
すものであり、酪農家の心に深く刻まれるだろうと述べた。



NZはWTO交渉に言及して強くけん制

 一方、カナダ向けMPCの最大の輸出国であるNZは翌8日、カナダが乳原料製品の輸入制限を検討し
ていることに関し、ゴフ貿易相がエマーソン外務貿易相に直接連絡をとって、NZ政府の強い懸念を伝え
たことを公表した。

  この中で、ゴフ貿易相は、カナダの決定はNZの乳製品輸出に大きな影響を与えかねないとした上で、
カナダのMPC市場はすでに数百万ドルの規模にありさらなる成長も見込まれるとし、実際にガット第28
条交渉に入った場合にはNZの酪農・乳業界が被るすべての貿易上の不利益について補償を求めていくと
述べてカナダをけん制した。

  また、今回のカナダ政府の決定は、両国の長期にわたる互恵的な貿易関係に逆行するのみならず、ドー
ハ・ラウンド交渉を通じた国際貿易の自由化という共通の目標に後ろ向きのシグナルを送りかねないもの
であるとして、これを厳しく批判した。



チーズの成分基準の設定による消費者への情報提供も

  これに併せ、ストロール農務食品相は、カナダ食品検査庁(CFIA)に対してチーズの成分基準に関
連した規格を設けるよう求めていくことも明らかにした。今後、CFIAはコーデックス基準などの国際
基準を踏まえ、乳製品の製造技術革新の状況を考慮しながら、利害関係者と具体的な規格について検討を
進めていくことになる。

  農務食品省は、この規格が制定されれば、国内の関連制度が一層調和のとれたものになり、消費者の関
心を保護して市場における商品選択に資することになるとしている。




【ワシントン駐在員 郷 達也 平成19年2月14日発】




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