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米国農務省動植物検疫局(USDA/APHIS)は1月4日、カナダ産の牛肉や生体牛の輸入を30カ月齢未満 のものに限定していた規則を改正し、牛肉については月齢による輸入制限を撤廃するとともに、生体牛については 輸入月齢条件を99年3月以降に生まれたものに緩和する方針を明らかにした。具体的な規則案は1月9日付けの官 報で公表されたが、USDAは一般からのコメントを3月12日まで受け付け、その内容を精査した上で、規則を実 行に移すこととしている。 2005年1月に制定された現行の輸入規則を改正 カナダから米国への牛肉輸出は、2003年5月のカナダでのBSE発生を受けて一時的に停止されたが、2005年1 月に米国側が30カ月齢未満の生体牛と特定危険部位を除くすべての牛肉について輸入を認める規則を公表しており (注:30カ月齢以上の牛肉については同年3月に輸入規則の適用の先延ばしを決定)、現在はこの条件下で貿易が 行われている。 今回の改正案は、2005年1月の現行規則を改正して、カナダについては99年3月以降に生まれた生体牛(反すう 家畜への飼料給与規制の開始から18カ月後に相当)の輸入を認めるとともに、規則の適用の先延ばしを解除して30 カ月齢以上の牛肉についても輸入を可能とすることを主な内容としている。 ジョハンズ農務長官は国際的なガイドラインに基づく改正案であることを強調 ジョハンズ農務長官は、今回の改正案について、米国におけるBSE対策を継続するとともに、BSE対策のた めに措置を適用している国との間で科学に基づく貿易関係を適用するための努力について次の一歩を踏み出すもの であると述べた。 また、同長官は、米国は以前からカナダの一連のBSE防止措置を踏まえて規則を定めていたが、今回、これ以 外の家畜や畜産物が安全に貿易できることが米国側の危険性評価により追加的に確認されたとするとともに、米国 のとっている改正手続きは科学に基づく国際的なガイドラインに整合する方法であると述べた。 カナダの農務・農産食品大臣は米国の動きを歓迎 一方、カナダ農務・農産食品省のチャック・ストロール大臣は同月5日、牛肉などの輸入条件緩和に向けた米国 側の動きは、国境を越えた安全な貿易の再開に一歩近づくものであり、両国の畜産関係者にとって重要なものであ るとして、米国側のリーダーシップを歓迎するコメントを発表した。 また、2005年1月の輸入再開時に定めた規則を改正することは、適切なBSE対策が実行されている場合には米 加間のように安全な貿易が継続できるという国際社会に向けてのメッセージを強化することにもなるとした上で、 動物や人間の健康を保護する観点から国際的に承認された科学的基準に基づく措置を適用することにより、貿易を 完全に回復させるとともに食品の安全性を確保することが、両国共通の優先事項であり目標であるとした。 実際の輸入措置の改正時期は不明確 USDA/APHISの具体的な規則案は同月9日付けの官報で公表され、一般からのコメントを3月12日まで 受け付けることになっている。コメント期間終了後の時間的枠組みについては、同月4日の記者発表時に多くの記 者から質問が出されたが、これに対応したジョン・クリフォード首席獣医官は、現段階では具体的な見通しについ て何らの予見も持っておらず、受け付けたコメントを幅広く精査した上で実行に移すとしかコメントできないとし ている。 ◎FDAが体細胞クローン家畜の食品としての安全性に関する報告書案をまとめる 昨年12月28日、米国保健福祉省食品医療庁(HHS/FDA)は、牛などのクローン家畜およびその子孫から生 産される畜産物が食品として安全であるとする報告書案を公表した。今後90日間、FDAは一般からのコメントを 受け付ける。 米国食肉協会(AMI)はこの発表を受け、「科学的に安全であるというFDAの考えは支持するが、大多数の 消費者が懸念するのであれば、クローン家畜から生産された食肉や牛乳乳製品の市場流通を認めることに慎重であ るべき」との意見を公表している。 なお、体細胞クローン家畜由来の畜産物は、業界の自主規制により米国においても市場流通していない。 【ワシントン駐在員 郷 達也 平成19年1月10日発】
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