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NZ食肉業界で経営状況の改善に向けた動き


食肉業界は、NZドル高などの影響により経営状況が低迷

 ニュージーランド(NZ)の食肉業界は、豪州での干ばつによる羊肉生産増などに伴う羊肉価格の低迷、羊肉
の主産地における干ばつの発生、生産コストの上昇などに加えて、NZドル高の影響を受けて収益性が悪化して
いる。このため、2006/07年度における大手食肉処理業者の中間事業報告では、利益が前年度実績を下回っている
ケースが目立っている。

 一方、NZ牛乳・乳製品業界では、堅調な国際需要を背景として乳製品国際価格が急速に上昇し好調な業況を
維持しており、対照的な状況にある。このため、NZでは、羊肉生産から酪農への経営転換も見られる状況にあ
る。

 ミート・アンド・ウール・ニュージーランドの7月20日の公表によると、2007/08年度の羊および肉牛生産農家
の経営状況は、現行水準の為替レートが継続した場合、厳しい状況が続くと予測している。



大手食肉処理業者で事業改善に向けた共同調査を開始

 こうした中、NZの大手食肉処理業者では、経営状況の改善に向けた動きが見られる。

 NZ食肉処理最大手の組合組織であるPPCSと第3位のアライアンス・グループは6月28日、両組合の将来
的な事業改善や組合員である生産者への利益還元の改善に向けた共同調査の開始を公表した。この調査には、約
2カ月を要する予定で、調査結果を基にそれぞれの組合で対応が決定されることとなっている。

 調査の詳細は明らかにされていないが、報道によると、両組合の将来的な合併の可能性を含めた包括的な調査
が行われると見られている。なお、両組合の事業を合わせると、売上高31億NZドル(3,007億円:1NZドル=
97円)、工場数33、ピーク時の従業員数1万4千名、組合員数1万6千名。また、NZ輸出量に占める割合は、
羊肉59%、牛肉37%、シカ肉78%となっている。



北米におけるNZ産ラム肉の販売の連携を強化

 また、PPCSは6月21日、これまで独自に行っていた米国およびカナダにおけるラム肉の販売を、今後、N
Z食肉処理業者との共同出資会社を通じて行うことを公表した。国際市場における交渉力を強化し、収益性の改
善を図るとしている。

 この共同出資会社はニュージーランド・ラム・カンパニー(NZLC)で、これまでアライアンスとANZC
Oフーズが出資し北米でのラム肉の販売を行っていた。PPCSはNZLCに対し31.5%出資し、今後、北米向
けラム肉はすべて同社を通じ、「ニュージーランド・ラムまたはニュージーランド・スプリング・ラム」ブラン
ドとして販売するとしている。PPCS代表は、北米における販売方法が、今後、それ以外の地域におけるマー
ケティングのモデルになるかもしれないとしている。



◎水資源確保のための全国計画、ビクトリア州が合意せず(豪州)

 ビクトリア(VIC)州首相は7月24日、連邦政府が提案していた水資源確保のための計画について最終的に
合意しないことを公表した。連邦政府とVIC州政府は、マレー・ダーリング集水域における水利権の買い上げ
および管理条件をめぐりこれまでに交渉を進めてきたが決裂した。報道によると、今後、連邦政府は憲法上の権
限を行使し法案の成立を目指す一方、VIC州は司法の場で争う姿勢を見せており、今後の動向が注目される。

 同計画は、連邦政府のハワード首相が今年1月25日、水資源の効率的な活用を図るため、全国のかんがい農業
地域における基幹施設整備のほか、連邦政府によるマレー・ダーリング集水域の水利権の買い上げおよび管理な
ど10項目を対策として提案し、10年間で100億5千万豪ドル(1兆8百億円:1豪ドル=107円)の資金を投入す
るとしていた(海外駐在員情報通巻753号参照)。これまでに、サウスオーストラリア州、ニューサウスウェール
ズ州及びクィーンズランド州は同計画に合意したが、VIC州のみ同集水域の水管理権をめぐり合意していなか
った。




【シドニー駐在員 井田 俊二 平成19年7月26日発】



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