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米国下院で2007年農業法案の審議が進む


 米国では、2007年農業法の制定に向けて下院での審議が進んでおり、関係者の動きも活発化している。下院では、先
日農業委員会を通過した法案が26日の本会議で成立する見通しだが、主要農業団体が法案に賛成する一方で、ジョハン
ズ農務長官は修正すべき点が多いとするなど、関係者の評価は分かれている。夏期休会明けに予定されている上院での
法案審議に向けて、今後の展開が注目される。



下院農業委員会は主要作物への補助制度を維持する法案を承認

  下院農業委員会は、7月17日から19日にかけてピーターソン委員長提出の2007年農業法案(H.R.2419)を審議し、一
部修正を行った上でこれを承認した。この法案は、26日に予定されている下院本会議で審議され、夏期休会前に下院農
業法案として確定することになる。今回、下院農業委員会で承認された法案は、現行農業法の根幹である主要作物への
補助制度を維持しつつ、政府補助金の受給要件の厳格化などにより財政支出の拡大を防ぐことがポイントとなっている。
 
  このうち、作物補助金については、多くの作物団体の主張を踏まえ、主要作物のローン不足払い、価格変動対応支払
い、野菜・果実の不作付けを条件とした直接支払いについて、品目別の支持水準の見直しや、変動支払いの発動要件の
拡充など一部に技術的な変更を加えつつ、制度そのものは維持する内容となっている。

  また、一部の大規模農業者に多くの農業補助金が支払われているという批判に対応するため、作物事業や保全事業な
どの補助金が受給可能な年収の上限(AGI)は、現行の250万ドル(3億500万円:1ドル=122円)から100万ドル
(1億2,200万円)に引き下げるとされており、これらの「節約分」で都市部の貧困層に対する食料支援を拡充するこ
となどが盛り込まれている。

  なお、農業委員会における調整の最終段階で、食肉の原産地の義務表示について、ひき肉の複数原産地表示を認める
とともに、事業者の書類保存義務を軽減することなどを内容とする現行法の改正案が含まれることとなった。



主要農業団体は下院法案を評価する一方、ジョハンズ農務長官は不満を表明
 
  下院農業委員会を通過した農業法案については、多くの農業団体がその内容を評価する一方で、ジョハンズ農務長官
は不満を表明するなど、関係者の評価が分かれている。
 
  米国最大の総合農業団体である米国ファーム・ビューローは同月20日、この法案について、主要作物に対するセーフ
ティー・ネットを継続しつつ、市場の需要に応じた作付けを推進するものであり、米国のあらゆる農業者の要望に応え
るバランスのとれたものであると評価するコメントを公表している。また、比較的小規模の生産者を会員とする全国フ
ァーマーズ・ユニオンも20日、この法案はセーフティー・ネットと改革のバランスがとれていると評価するとともに、
原産地表示の義務化を確実に実行することで家族農業はもとより消費者にも利益をもたらすものであるとコメントして
いる。

  これに対し、ジョハンズ農務長官は同月25日、下院農業委員会が承認した農業法案について、農業政策の改革を後戻
りさせ、増税を招きかねないのみならず、貿易自由化の国際的潮流に逆行するものであると強く批判した。また、同長
官自身のみならず政府関係者の一致した見解として、大統領はこの法案が通れば拒否権を発動することになるだろうと
指摘した。特に、AGIの引き下げ水準(100万ドル)が政府提案(20万ドル(200万円))に比べて不十分であること、
一部作物についてローンレートなどの支持水準を引き上げて政策の貿易阻害度を引き上げていること、農村開発、新規
就農者対策、保全事業などのより重要な政策が軽視されていることなどを具体的な問題点としてあげ、引き続き、議会
に改革の重要性を訴えていきたいとした。



上院の審議は夏期休会開けまで行われない公算大

 一方、下院と平行して公聴会を開催し、夏期休会前の本会議通過を目指していた上院農業委員会のハーキン委員長は、
本会議での審議日程がとれないこともあり、夏期休会前に農業法の委員会審議を開始する可能性はほとんどないとの考
えを明らかにしている。

  また、同委員長は、上院の関係議員を満足させるだけの財源確保が困難な中で農業法案の調整が難航していることを
認める一方、上院は下院の農業法案にとらわれることなく独自の内容を検討するとして、保全事業のさらなる拡充や、
補助金受給資格の一層の厳格化を上院農業委員長提案に盛り込むことを示唆している。

  米国の農業法は、今後、上院での法案可決を待って、両院協議会で上下両院の法案のすり合わせを行い、一本化した
法案を再度上下両院の本会議で議決した後に、大統領が署名して初めて成立する。当地では、2007年農業法の大半が失
効する9月末までに新農業法が成立することは不可能であり、年内に成立すれば上出来との見方が一般的である。




【ワシントン駐在員 郷 達也 平成19年7月25日発】



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