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食料の安全性確保の取組(シンガポール)


米国からの牛肉輸入再開を承認

 シンガポール食品獣医庁(AVA)は、このたび2005/06予算年度(4月〜3月)における活動報告を公
表した。AVAは、同国の都市計画の策定やインフラの整備などを所管する国家開発省(MND)傘下の組
織であり、同国における農業政策や食品の安全確保、動植物に関する衛生管理などを担当している。

 活動報告は、動植物の衛生関係、農業技術関係などAVA所管分野の多岐にわたるが、食品の安全確保と
安定的な供給に関する活動内容として、AVAは、アルゼンチン、ブラジル、フランス、マレーシアおよび
米国の5カ国について職員を派遣し、と畜場、食肉や卵の加工処理施設、農場および研究施設の検査を実施
したとしている。このうち、米国については2005年11月にBSEについて現地調査を行った。この結果、米
国農務省(USDA)によるBSE対策は満足できるものとして、シンガポールは2006年1月17日、2003年
12月以降に輸入を禁止していた米国産牛肉の一部輸入再開を認めている。

 また、当該年度に国外の食肉や食肉加工品などの製造業者からシンガポールに対する輸出申請が74件あり、
それらを審査した結果、新規に19カ所の食肉加工施設を承認した。


輸入食品の検査を重視

 AVAは国外にある家きんや豚の農場を認可し、生鳥、卵および肉豚についてシンガポールへの輸入を認
めている。2005/06年度では、国外58カ所の家きん農場の輸入品からサルモネラ菌やバンコマイシン耐性腸
球菌および多量の抗生物質が検出されたことによりAVAの認可を取り消されたほか、国外11カ所の食肉処
理・加工施設も衛生上の問題により認可を取り消されている。

 現在、AVAにより認可された国外農場は203カ所で、その大多数はマレーシアにあり、養鶏場と鶏卵農
場が107カ所、アヒル農場が53カ所と全体の約8割を占めている。豚については、インドネシアの養豚場1
カ所から生体での輸入が認可されている。

 また、シンガポールは、国内で消費する食料の9割以上を輸入に依存しているため、輸入食品に対する検
査を重視しており、2004年に開設されたAVAの食品検査所において、細菌検査や抗生物質の残留検査など
を実施している。今期は、食肉や食肉加工品など6万件の貨物(約7億6,600万シンガポールドル相当(約
597億5千万円:1シンガポールドル=78円))を検査し、サルモネラ菌などが検出された199件の貨物につ
いて輸入申請を却下した。そのほかの食品については、約22万6千件の貨物のうち、42件について食品添加
物が許容水準を超えていたとして輸入申請を却下している。

 シンガポール国内の食品工場や水産加工施設なども、AVAによる規制の対象となっており、合計で1,126
カ所が認可されている。これらの施設で製造される製品のうち約3千サンプルを検査したとしている。

 畜産関係では、国内14カ所の食鳥処理・加工施設がAVAにより認可されており、ブロイラーは10カ所、
アヒルは4カ所で処理されている。2005/06年度は、約4,400万羽の家きん類が処理されたが、このうち約96
%はマレーシアからの輸入で占めており、輸入数量は前年同期比約16%増となっている。また、AVAは、
これらの14カ所の食鳥処理・加工施設について、延べ448回の衛生検査を実施するとともに、コールドチェー
ンの検査も20回実施したとしている。


畜産物の消費量は鶏肉がトップ

 今回の活動報告では、2005年の畜産物の消費量、輸入量などの数値が併せて公表されている。シンガポー
ルにおける食肉の1人当たり消費量は、鶏肉が最も多く豚肉、牛肉の順となっている。鶏肉消費量は、過去
5年間では鳥インフルエンザ(AI)による影響を受ける前の2003年が最も多く、2005年時点ではまだ当時
の消費水準に回復していない。消費傾向をアセアン各国と比較すると、品目別消費量は隣国のマレーシア
(豚肉消費量は非ムスリムの場合)とほぼ同じ傾向を示している。





【シンガポール駐在員 林 義隆 平成19年3月15日発】



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