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飼養頭数は5期ぶりに前年同期比割れ、稼働率も5.8ポイント低下 豪州フィードロット協会(ALFA)は5月16日、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)との共同調査 による四半期ごとの全国フィードロット飼養頭数調査結果を発表した。これによると、2007年3月末時点 の総飼養頭数は87万3千頭となり、前回調査(2006年12月末)比で3.9%減少、前年同期比では2.5%の減 少となった。飼養頭数は、堅調な豪州産牛肉需要を背景に増加傾向で推移してきたが、今期は5期ぶりの 前年同期比割れとなった。一方、フィードロット収容可能頭数は前回調査に比べ3.4%増の112万9千頭に 拡大したことで、フィードロット稼働率は77.4%と、前回調査から5.8ポイント低下した。 主要生産地のQLD州、前年同期比で大幅減 季節的な変動要因を考慮し、州別のフィードロット飼養頭数を前年同期と対比すると、主要肉牛生産地 であるクイーンズランド(QLD)州、また、ビクトリア(VIC)州で減少した。特にQLD州では、 生産コストの上昇などが影響し、前年同期比3万4千頭の減少となった。 一方、VIC州同様、干ばつの被害が大きかったニューサウスウェールズ(NSW)州や南オーストラ リア(SA)州では、干ばつにより肉牛生産者が国内向けを中心にフィードロットへの出荷を促進させた ことで、前年同期並みの結果となった。 経営環境は厳しい局面が続くも、降雨による飼料価格の低下を期待 フィードロット飼養頭数の減少についてALFAでは、@主要取引先であるアジア各国の通貨に対し、 豪ドル高で推移する為替相場による輸出環境の悪化、A干ばつによる飼料用穀物価格の上昇(2006年当初 比で75〜90%値上がり)に伴うフィードロットでの生産コストの大幅増、B日本や韓国市場での米国産牛 肉との競合による豪州産牛肉需要の低下−などを要因としている。 輸出市場を中心とするフィードロット各社は、輸出環境が悪化することでコストの増加分を価格に転嫁 することが難しく、経営環境は厳しい局面が続いている。MLAでは、飼養規模別に見た場合、1万頭以 上を飼養する大手フィードロットの飼養頭数が前年同期比4%増であるのに対し、1万頭を下回る規模の ものが同10%減となっており、中、小規模のフィードロット経営環境は、より厳しいとしている。 今後の見通しについてALFAでは、5月に入り干ばつ地域を中心に一定の降雨があったことで、今年 度の穀物生産は良好との観測から、高価格帯で推移する飼料用穀物価格が徐々に引き下がり、フィードロ ット経営の改善につながるとみている。しかし一方で、降雨は肉牛の飼育環境改善につながり、家畜市場 などに対する肉牛供給の減少を招くことから、飼料価格とともに重要となる肉牛価格への波及を懸念して いる。 ◎豪州干ばつ地域に恵みの雨、穀倉地帯では早くも豊作を期待 干ばつの被害が大きいNSW州、VIC州など豪州東部地域の穀倉地帯を中心に広い範囲で、5月中旬 にまとまった降雨が観測された。今回の降雨は5月初旬に続くもので、地域によっては5年ぶりのまとま った雨と報告されている。季節的に小麦など冬穀物のは種時期であり、また、豪州農業資源経済局(AB ARE)が作成した穀物生産見通しでは今年の作付面積が大幅増としていることから、穀倉地帯では早く も豊作との期待が出ている。 【シドニー駐在員 横田 徹 平成19年5月23日発】
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