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口蹄疫に関する救済措置を実施(イギリス)


 
救済措置の総額は1,250万ポンド

  英国では、6年ぶりに口蹄疫の感染が確認された8月3日以降、8例(10月10日現在)が確認されており、
現在も監視区域の設定や移動制限など防疫措置が講じられている。この影響により、特に監視区域などが設定
されているイングランドの畜産農家の経営に対する多大な損害が懸念されている。

  今般、環境・食料・農村地域省(DEFRA)のBenn大臣は、これらの畜産農家に対する救済措置の実施を
公表した。

  救済措置の総額は1,250万ポンド(30億3,750万円:1ポンド=243円)としており、主な内容は以下のとおり。

 ・口蹄疫発生による打撃が特に大きいとされている高地農家に対し、総額850万ポンド(20億6,550万円)の支
  払い(同省は、この予算額が、既存のイングランド農村開発プログラムの一つである条件不利地域にある牛、
  羊生産農家への高地農家手当て(Hill Farm Allowance)の2007年予算の30%に相当すると強調)

 ・口蹄疫危険区域内の農家に対するへい死獣の回収経費の補助率を10%から100%へ引き上げ。予算額は約100
   万ポンド(2億4,300万円)

 ・農家の支援事業などを実施している慈善団体Arthur Rank Centreへ、農家訪問やサポート事業などに対し100
   万ポンド(2億4,300万円)の援助

 ・牛肉、豚肉、羊肉の国内外の販売促進に対して200万ポンド(4億8,600万円)の補助



規則適用などについての軽減措置も実施

  同省では、財政面での救済措置のほか、規則面での農家の負担軽減を図るための救済措置を実施するとして
いる。主な内容は以下のとおり。

 ・輸出用ではない家畜の65キロメートル以上の運搬ライセンスの期限を2008年1月5日から2008年4月末までに
   延長

 ・英国政府は欧州委員会に対し、硝酸塩脆弱地域(NVZs)内の農家の牧草地に施用する年間窒素量1ヘクター
   ル当たり170キログラムの適用について特例措置を要請。また、既に協議された硝酸塩指令の実施日につい
   て、2007年12月13日から1カ月延期。

 ・口蹄疫が直接の原因で、直接支払いの受給要件であるクロス・コンプライアンスおよび農業環境計画の条件
   が満たせない場合、これを条件違反とは見なさない。



生産者団体は不満の声

  この救済措置に対し、全国農業者連合(NFU)Kendall会長は、高地農家にとっては有益なものであるとし
たものの、農家が被った口蹄疫による損失額には全く及ばないと不満の声を表明した。

  同会長は、今回の口蹄疫のウィルス流出源がPriblightの研究施設であることを強調し、これにより損害を受
けた何万という畜産農家の損失総額は約1億ポンド(243億円)に達するとし、今回、政府が公表した救済措置
の予算額は、損失総額に対し不十分であり、政府はさらなる救済措置について再検討し、実施する必要がある
としている。



【ブリュッセル駐在員 小林 奈穂美 平成19年10月10日発】

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