ALIC/WEEKLY


2006年の家きん消費量、輸入量ともに減少(シンガポール)


鶏肉消費量は減少傾向で推移

 シンガポール食品獣医庁(AVA)は今般、2006/07会計年度(4月〜3月)における活動報告を公表した。
同報告にはシンガポールの畜産物の需給状況、AVAが実施した食品の安全確保と安定的な供給に向けた取り組
みのほか、東南アジア地域で継続・再発している高病原性鳥インフルエンザ(AI)に対する対策などが記述さ
れている。

 シンガポールで消費される畜産物については、鶏卵が国内需給の約3割を自給しているほかは、基本的に海外
からの輸入に頼っている。2006年の畜産物輸入数量については、牛肉、豚肉及び鶏卵が前年より増加したが、ニ
ワトリやアヒルなどの家きんは減少した。牛肉は、豪州産とブラジル産で全輸入数量の約8割を占めているが、
2006年から米国産の輸入が再開されており、同年の輸入実績は約400トンであった。豚肉は、生鮮・冷蔵品が主
に豪州産、冷凍品がブラジル産と中国産となっており、生体は全頭インドネシアから輸入している。

 家きんの輸入実績には、主要輸入国であるマレーシアのAIの発生が大きく影響している。同国では昨年2月
以降、首都近郊のスランゴール州、マレー半島北部のペラ州ほかでAIの発生が確認され、シンガポール政府が
当該州産の家きんおよび家きん製品の輸入禁止措置を実施した。このうち、ペラ州はマレーシアにおけるアヒル
飼養羽数の約7割を占めることから、アヒルの生体輸入に特に大きな影響を与えた。

 また、畜産物の2006年1人当たり年間消費量については、例年と同様に鶏肉が最も多く、豚肉、牛肉の順とな
っている。鶏肉については、2003年以降、消費量の減少傾向が続いており、2006年は対前年比9.8%減となった。
豚肉については、ほぼ前年並みの消費量で推移しているが、これについてシンガポール食肉輸出入協会(Singapore 
Meat Traders Association)は、同国の人口の8割を占める中国系シンガポール人の消費動向に変化がみられな
いためとしており、豚肉輸入数量の増加については人口増加による影響が大きいとしている。

 さらに、同協会は豚肉の新規供給先を確保するため、当該年度はAVAとともに中国、フィリピンおよびニュ
ージーランドへの視察を実施したとしている。同協会は、豚肉の輸入先国を多数維持することは必要であるもの
の、輸入コストなども勘案する必要があるとしており、輸送費などの経費が上乗せされるEU各国からの輸入数
量はこれ以上増加しないとの見解を示している。現在、シンガポールでは、フランス、ドイツ、オランダなどの
EU各国から冷凍品を輸入しており、冷凍品輸入量に占める割合は約2割となっている。


重要な国外農場管理

 同国では、国内で消費する食品の9割以上を海外から輸入しているため、その安全性と供給源の確保が重要視
されている。このため、AVAは食品の輸入先に対し衛生水準や生産方法、食品安全規格などについて検査訪問
を実施し、安全性の確保に努めているが、当該年度については、中国、マレーシア、タイなど計7カ国のと畜場、
食肉加工施設および農場などの検査を実施したとしている。

 シンガポールに対して生体鶏および非加熱の卵などを輸出する場合、AVAの承認が必要とされており、2007
年3月時点でAVAにより認可されている国外農場は223カ所となっている。このうち、117カ所の養鶏場と58カ
所のアヒル農場がマレーシアに所在している。輸入品からサルモネラ菌やバンコマイシン耐性腸球菌などが検出
された場合、当該農場からの輸入停止処分が実施されるが、当該年度は31カ所の養鶏場が処分の対象となったと
されている。


積極的なAI危機管理対策を実施

 また、AVAは、積極的な危機管理対策(生産地管理、入国管理、国内管理、緊急対応準備)により、シンガ
ポール国内におけるAI発生の防止に努めているとしている。このうち生産地管理は、生産国における鶏肉や鶏
卵の管理が適切に実施されるよう獣医関連機関と協力を密にするほか、シンガポールに輸入されるペット用の鳥
は、生産国においてAI感染の有無を確認するための検疫を受けることとしている。入国管理は入国管理局と連
携し、生体鶏や卵などからのサンプル検査を実施するほか密輸入の取り締まりを実施している。国内管理は、す
べての家きん処理施設や飼養農場などでバイオセキュリティの強化を促すほか、渡り鳥の調査なども実施してい
る。また、庭先養鶏によるAIの発生・拡大を防止するため、同国ではペット用などの家きんについて10羽以上
の飼育を禁止するほか、野生の鳥との接触を避けるためにすべて鳥かごに入れて飼養するように義務付けている。
緊急対応準備としては、AI発生時に備えて家きん処分に係る対応策を策定したほか、経済的な損失を補てんす
るための産業保険を扱う全国労働組合会議への補助を実施している。






【シンガポール駐在員 林 義隆 平成19年10月25日発】



元のページに戻る